トップメッセージ

すべてのステークホルダーの皆さまへ

平素より格別のご高配を賜り、厚くお礼を申し上げます。

2023年度の業績

2023年度の世界経済は、「アフターコロナ」での経済活動の正常化により回復基調にありましたが、長期化するロシア・ウクライナ情勢によるエネルギー価格の上昇や原材料価格の高騰等、インフレが家計や企業の活動に影響を与えました。日本においては、2023年5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行されたことにより「アフターコロナ」への転換が進み、日本の消費者の消費が活発化するとともに、インバウンドの回復による外国人旅行者の消費も景気回復を後押ししました。金融市場においては、欧米を含む多くの国の中央銀行が連続的に政策金利を引き上げたことで、景気悪化への懸念も生じました。日本では、日本銀行が2024年3月の金融政策決定会合において賃金と物価の好循環を確認し、2%の「物価安定の目標」が持続的・安定的に実現していくことが見通せる状況に至ったと判断し、2016年から継続してきたマイナス金利政策の解除を決定しました。その結果、これまで−0.1%としていた政策金利を0~0.1%程度に引き上げました。

2023年度において、当行は、銀行サービスが重要な社会インフラであるという認識のもと、内部管理態勢の高度化を図るとともに、安心・安全で便利な銀行サービスの提供に努めました。また、マーケティングの精度改善、新サービス導入による利便性の向上、資金運用力の強化等を図り、従来にも増して成長力と収益力の強化を重視した経営に取り組んでまいりました。これらの戦略が奏効し、当行の事業規模は大きく拡大しました。単体口座数が2024年2月に1,500万口座を突破し、2024年3月末には1,523万口座に達しました。また、単体預金残高が2023年12月末に10兆円を超え、2024年3月末には10兆5,402億円となりました。運用資産においては、連結買入金銭債権が、楽天カード株式会社のクレジットカード債権を裏付資産とする信託受益権の購入等により前連結会計年度末比4,477億円増の2兆5,508億円となり、連結貸出金は、投資用マンションローンや提携ローン等の堅調な増加に加えて、カードローン残高が純増に転じたことにより同2,889億円増の4兆695億円となりました。

その結果、当行の業績は、連結経常収益1,379億円(前年比14.5%増加)、連結経常利益483億円(同24.8%増加)、親会社株主に帰属する当期純利益は344億円(同24.3%増加)となりました。加えて、2023年度末の連結自己資本比率は10.93%となり、健全な自己資本水準を維持しました。また、2023年度の単体経費率(営業経費の業務粗利益に対する割合)が42.5%(前年度末比3.2pt改善)となり、事業規模の拡大により経営効率が向上しました。

当行の事業戦略とその進捗状況

2022年4月に、当行は「中長期ビジョン」を公表しました。これは、従来の当行のビジネスの拡大を“第一の成長ステージ”と位置づけ、次なる“第二の成長ステージ”において、更なる業容の拡大、企業価値の向上を実現するための戦略、目標をお示ししたものです。この中長期ビジョン達成に向けた戦略として、①「顧客基盤の拡充」、②「収益力の強化」、③「FinTech領域の成長取り込み」の3つを掲げ取り組んでいます。

1つ目の「顧客基盤の拡充」においては、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、急速に進展したデジタルシフトを追い風として、楽天エコシステムの強固な顧客基盤を有効に活用し、楽天グループ内の各事業とのシナジーを更に追求することにより、新規のお客さまの獲得を推進しています。また、当行は、システムの開発・保守・運用までを自行で行う体制を構築しているため、お客さま数が大きく増えても安心・安全で便利なサービスを安定的に提供できることが、顧客基盤の拡充を支えています。

2つ目の「収益力の強化」においては、顧客基盤の拡充を背景として、顧客との取引から生まれる金利収益と非金利収益双方の強化に取り組んでいます。まず、当行は新規上場時に実施した増資により得た資本を有効活用し、適切なリスクコントロールの下、ローリスクアセットとミドルリスクアセットのバランスを取りながら運用資産を拡大し、金利収益の大きな成長を目指しています。特に、お客さまのライフスタイル、ライフステージの多様化から生じる様々なニーズに応えるために、商品ラインナップを拡充しています。人生100年時代の到来による価値観や住まいのあり方の多様化を踏まえ、住宅を購入されるお客さまの住宅ローンの返済負担を軽減するとともに、将来の住み替え等、様々なライフステージに合わせた住み方をお客さまご自身でお選びいただける住宅ローンとして、「残価設定型住宅ローン」を一般社団法人移住・住みかえ支援機構と共同で開発しました。旭化成ホームズ株式会社、ミサワホーム株式会社、パナソニックホームズ株式会社、大和ハウス工業株式会社、トヨタホーム株式会社の販売会社と提携し、提携先を通じて「残価設定型住宅ローン」をお客さまに提供しています。次に、当行は「生活口座として利用される銀行」を目指し、お客さまの給与振込や口座振替等、生活に密着する資金の受取りや支払いを取り込み、併せて外貨預金、振込、海外送金等の利便性に優れた幅広いサービスをお客さまに提供することにより、非金利収益の拡大を図っています。特に、お客さまデータを活用して、それぞれのお客さまが興味を持つ当行のサービス、楽天グループのサービスをご提案し、お客さまのサービス利用頻度を向上させて非金利収益の拡大を図りました。これらの取組が奏功し、2024年3月時点で、KPIとして設定しているメイン口座率(当行の口座を給与・賞与の受け取りもしくは口座振替にご利用されている口座の割合)は31.5%まで伸長し、当行をメイン口座としてご利用いただくお客さまが順調に増加しています。また、楽天証券株式会社との口座連提携サービス「マネーブリッジ」の自動スイープの対象に国内株式積立注文取引を新たに加え、楽天証券株式会社をご利用いただく当行のお客さまの利便性をさらに改善しました。この改善は、2024年1月に開始された新NISA制度においても、多くのお客さまにご利用いただいており、非金利収益の増加に繋がっています。

さらには、新たな事業領域への進出による収益力の強化という観点で、銀行のみでは提供できない「銀行サービスを超えた金融サービス」の実現を目指して、BaaS(Banking as a Service)を推進し、2024年5月に、東日本旅客鉄道株式会社(JR東日本)、及び株式会社ビューカードと連携して「JRE BANK」のサービスを開始しました。当行のBaaSへの取組は、提携先のユニークなアセットやノウハウを当行の利便性の高いオンラインバンキングサービスと組み合わせ、当行単独では実現できない新たなユーザー体験をお客さまに提供することにより収益機会を創出するものです。

3つ目の「FinTech領域の成長取り込み」においては、近年、大きく拡大しているキャッシュレスペイメントにおいて、お客さまの多様なニーズにお応えすることに注力しました。当行が提供するキャッシュレスペイメント手段であるデビットカード、プリペイドカードについては、ご利用額の1%を楽天ポイントやプリペイドバリューで還元するお得さを訴求するとともに、各種キャンペーンを実施することにより、お客さまにキャッシュレスペイメントの利便性を実感いただき、大きく利用を拡大することができました。また、「楽天銀行コンビニ支払いサービス(アプリで払込票支払い)」において、地方税の電子納付(eL-QR)に対応することにより、自宅に居ながら楽天銀行アプリを通じて支払うことができる払込票を大幅に拡大しました。加えて、楽天グループのキャッシュレスペイメント手段と銀行口座を組み合わせたサービスとして、楽天ペイの当行口座払いをご利用いただくお客さまの増加に努めるとともに、楽天カードのクレジットカードの利用代金を当行口座から口座振替で支払うことにより楽天ポイントや優遇金利が得られることを訴求することにより、お客さまのキャッシュレスペイメントニーズの拡大、およびその取り込みを図りました。

2021年1月に台湾初のオンライン銀行として開業した、当行海外子会社である樂天國際商業銀行股份有限公司(以下、「樂天國際商業銀行」)は、当行が日本で培ったインターネットバンキングのノウハウや最先端のIT技術等を活用し、台湾において「安心・安全で最も便利」な銀行サービスを提供することに努めています。樂天國際商業銀行は、台湾での楽天エコシステム(クレジットカード、EC、野球球団、電子書籍等)や現地パートナー企業との連携等を通じ、お客さまに利便性の高いサービスを提供し、2024年3月末の預金口座数は219千口座、預金量は228億台湾ドル(円換算額1,081億円、円換算レート4.74円/1台湾ドル)となっています。日台間の入境制限の緩和に伴い台湾から日本への旅行客は急回復しており、樂天國際商業銀行は日系銀行としての強みを活かし、台湾のお客さまにとって台湾国内のみならず、日本滞在時にも利便性の高いサービスを提供することを目指してまいります。

当行の戦略、取組に対する外部評価

当行の事業戦略やお客さまに利便性の高い銀行サービスを提供する取組については、外部の機関からも高い評価を受けています。米金融専門誌グローバル・ファイナンス誌主催の「Global Finance World's Best Consumer Digital Bank Awards」において「Country Winner」を9年連続で受賞したことに加え、アジア金融専門誌「Asiamoney」が主催する「2023 Asiamoney Best Bank Awards for Japan」においても「Best Bank for Digital Solutions」を6年連続で受賞する等、当行のデジタルバンキングサービスの優位性やイノベーションへの取組が、グローバルに評価されました。

一方、国内の評価機関においても、東京商工リサーチの全国企業データベースで、ネット銀行をメインバンクとしている企業を集計した「ネット銀行メインバンク調査」の「2023年メイン取引社数」第1位を獲得しました。これは、法人向け銀行サービスにおけるネット銀行の存在感が増している中において、当行の法人向け決済サービスの利便性や価格競争力等が評価されたものであり、当行の法人向けサービスが競争優位性を有している証左であると考えています。今後も、システムの内製化という当行の強みを活かして、法人のお客さまのニーズに合わせた機動的なサービス開発を行うことにより、更なる法人のお客さまとの取引深耕、当行法人サービスの競争力強化に努めてまいります。

持続可能な社会の実現に向けて

当行は、持続可能な社会の実現に向けて、環境面と社会面から様々な取組を進めています。環境面では、物理的な支店を持たないために温室効果ガスの排出が少ないというビジネスモデル上の優位性を活かすとともに、口座開設等の各種手続きのペーパーレス化等を推進し、環境の保全に資する取組を強化しました。加えて、TCFD提言への賛同とそれに基づく気候変動関連の情報開示や気候変動イニシアティブへの参加等を通じ、環境に配慮した経営に努めました。また、環境への負荷を削減する取組として、2023年暦年で、事業活動で消費するエネルギーを100%再生可能エネルギーで調達することを目標とする「RE100」を国内外において達成したほか、環境関連投融資を通して社会のカーボン・ニュートラルへの取組支援を進めました。

社会面においては、地域社会への貢献が重要な責務のひとつであるとの認識のもと、インターネット銀行としての特性を活かし、楽天グループのインターネット募金「楽天クラッチ募金」を通じて「令和6年能登半島地震被害支援募金」等の取り扱いを行うとともに、大学生を対象とした金融教育授業を開催しました。さらには、海洋プラスチックごみの増加や市民ボランティアの担い手不足という地域社会の課題解決に向け、当行の行員や家族による清掃活動等にも取り組みました。また、役職員の自律的な能力開発を目的とした人材育成に努め、ダイバーシティの促進においては、女性の管理職比率35%以上、平均勤続年数の男女差異(女性平均年数/男性平均年数)75%以上という具体的な数値目標を設定し、取り組みを強化しました。

当行は、今後とも、お客さまやその他のステークホルダーの皆さま、地域社会と連携して、持続可能な社会の実現に向けて、取組を拡充してまいります。

最後に

当行は、FinTechのリーディングカンパニーとして、引き続き「安心・安全で最も便利な銀行」を目指してまいります。業容の拡大、業績の向上、企業価値の最大化を通じて、ステークホルダーの皆さまに貢献していく所存でありますので、今後とも楽天銀行をお引き立ていただきますようお願い申し上げます。

2024年7月
代表取締役社長

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