事業等のリスク
経営に係る各種リスクを適切に認識・管理するための枠組みとして、当行グループは取締役会にて決議された「統合的リスク管理基本規程」のもと、全社的なリスク管理方針、各種リスク管理方針及びリスク管理組織・体制を定めています。また、リスクに関する経営会議の事前協議機関として「リスク管理委員会」を設置し、全社的なリスク管理統制部署としてリスク管理本部を設置するとともに、各種リスクの管理統制部署を設置することで、適切なリスク管理を実践しています。以下の「(1) 経営環境に関するリスク」、「(2) 楽天グループとの関係に係るリスク」及び「(3) 当行グループの事業に関するリスク」で記載されている各リスクのうち、当行グループにおいて、影響度や蓋然性の観点から、経営上特に重要なリスク事象について、リスク管理委員会及び経営会議等での議論を踏まえて、経営者が「トップリスク」を以下のとおり認識しています。この「トップリスク」に対して、予め必要な措置を講じて、可能な範囲でリスクをコントロールするための未然防止策を策定・実施し、当該リスクの適切なコントロール及びガバナンスの強化に活用しています。
当行におけるトップリスク
リスク事象 | リスクシナリオ(例) |
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競争環境の激化 |
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技術革新への対応遅延 |
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深刻な感染症の流行 |
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楽天グループとの関係 |
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システム障害 |
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サイバー攻撃 |
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監督官庁等の規制等 |
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金融犯罪・マネロン対策・制裁違反リスク対策への対応不備 |
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人的資源確保の困難化 |
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金融政策の変更に伴う金利の上昇 |
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1.経営環境に関するリスク
① マクロ経済環境に係るリスク
当行グループは、日本と台湾において銀行業を営んでおり、当行グループの業績は国内の景気動向とともに、海外の経済動向、社会情勢及び地政学的リスク等の影響を受けます。各国の中央銀行の金融政策の変更により国内外の金利が低下した場合、資金運用に係る収益が低下する可能性があります。また、当行は、お客さまの給与振込、口座振替を獲得する等、生活に密着する資金の受取りや支払いを取り込むことにより当行口座をお客さまの生活口座としてご利用いただくことを推進し、併せて外貨預金、振込、海外送金等の利便性に優れた幅広いサービスをお客さまに提供することにより手数料収入の拡大を図っていますが、経済活動の低迷による企業活動の停滞及び個人消費の低迷等により、当行サービスの利用が減少した場合には、想定よりもお客さまの生活口座化が進まず、また、手数料収入が低下する等の理由により当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
② 深刻な感染症の流行に関するリスク
新型コロナウイルス感染症は、2023年5月に5類感染症に移行され、行動規制の緩和等、一定の落ち着きを見せているものの、今後も未曾有の感染症の出現・流行の可能性があります。引き続き国内外における各種感染症の発生・感染状況やこれに伴う経済動向に注視し、適切なリスク管理を実施する方針ですが、想定以上の感染拡大等により経済状況がさらに悪化した場合や景気の低迷が長期化した場合等には、資金需要の減退に伴う減収、与信関連費用の増加、保有有価証券等の評価損等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、当行グループでは、銀行サービスが社会インフラであるとの認識の下、感染拡大防止に取り組みつつ、銀行に求められる決済・預金・貸出業務の提供をいかなる状況においても継続するという社会的責任を果たすため各種感染防止対策を実施しており、今後も流行状況に応じて、既存の業務継続体制をベースに、オフィスにおけるパーティションの設置、同一部署の社員の勤務場所の分離、交代勤務の実施、テレワークの拡大等の感染防止の取組を行ってまいりますが、各種感染症が流行し、多数の役職員が罹患するといった事態が生じた場合、事業継続に支障が生じる可能性があります。
③ 競争環境
当行グループは、インターネットを活用した銀行業を営んでいますが、国内には当行以外にもインターネットバンキングを中心として銀行業を営む金融機関が一定数存在するほか、資金・人員面でより優位な他の金融機関においても経営資源をインターネットバンキングに投下する動きが見られ、今後、インターネットバンキングにおける金融機関の競争がさらに激化する可能性があります。また、当行は、主にインターネットを通じてお客さまに銀行サービスを提供していますが、伝統的な対面での銀行サービスの提供を好むお客さまも存在することから、顧客獲得等の面において実店舗を有する金融機関との競争が激化する可能性があります。
加えて、他業種による銀行業への参入や金融サービスの提供の動きが見られるほか、楽天グループ内でもキャッシュレスペイメント分野で潜在的な競合の可能性がある等、他業種との競争が激化する可能性があります。当行グループは、競合となり得る金融機関や他業種の動向を注視しつつ、引き続き顧客ニーズに合致したサービスの提供を行う方針ですが、これらの取組が期待通りの成果を上げられず、当行サービスが競争力を失った場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、当行は楽天ブランド、楽天ポイントの活用及び楽天グループ各社との顧客相互送客等を通じた楽天エコシステムの活用により他のインターネット銀行に比して優れた利便性や価格競争力のあるサービスをお客さまに提供していると考えており、引き続き楽天エコシステムとのシナジーを強化して新規顧客獲得及びお客さまのリテンションを推進しますが、楽天エコシステムや楽天ポイントが他社グループとの競合の中で競争力を失い、その影響として当行サービスも競争力を失った場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
④ 業界における技術革新等
当行グループが営むインターネットを活用した銀行業は、技術の進歩や変化が著しく、頻繁に新しい技術を活用したサービスが導入されています。当行は常に最新の技術動向及び市場動向の調査、技術的優位性の高いサービスの導入、既存システムの改良等の検討を通して、競争力を維持するための施策を講じています。しかしながら、何らかの要因により、当該変化等への対応が遅延した場合には、サービスの陳腐化、競争力の低下等が生じる可能性があります。また、変化等への対応が可能な場合であっても、お客さまのキャッシュレスペイメントの普及が想定どおり進まない可能性や、既存システムの改良、新システムの開発等による費用の増加等が発生する可能性があり、これらの動向及びその対応の巧拙により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、当行グループの事業運営の障害となり得る技術が開発される可能性もあり、このような技術が広く一般に普及した場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
2.楽天グループとの関係に係るリスク
① 楽天グループ株式会社が株主総会の決議事項に関する支配権又は重大な影響力を有することについて
当行は、楽天グループ株式会社(東証プライム上場企業)の連結子会社であります。当行は、意思決定の透明性・公正性を確保するため、取締役の過半数を独立社外取締役としているほか、独立役員(一般株主と利益相反が生じるおそれのない社外取締役及び社外監査役をいいます。)から構成される特別監視委員会を設置し、楽天グループ株式会社からのグループ事業戦略上の要請に基づく経営方針の決定や当行グループと楽天グループの相互に関連する人事案件及び楽天グループ株式会社との経営基本契約の締結や非独占的ブランドライセンス契約の締結をはじめとする楽天グループとの取引及び行為の実行に際して、少数株主保護の観点等から取引の必要性及び取引条件の妥当性等を検証し、同委員会に事前に諮問又は事後に報告をしなければならないこととしています。また、当行は、楽天グループ株式会社と経営基本契約を締結し、同契約において楽天グループ株式会社と当行の株主との間に利益相反リスクがあることを踏まえ、上場子会社として求められる独立性を尊重する旨を定めています。しかし、株主総会決議が必要となる取締役及び監査役の選任・解任、定款の変更、当行の重要な方針の決定等においては、同社が当行グループの経営に重要な影響を及ぼす可能性があります。なお、経営基本契約において、楽天グループ株式会社は、当行が楽天グループ以外からの取締役の登用を積極的に行う等、ガバナンスに対する適切なチェックが働く体制とすることを尊重するとともに、従業員に対する当行の人事権を尊重する旨を定めています。また、同契約において楽天グループ株式会社に対する事前承認、事前協議事項は規定しておらず、当行から楽天グループ株式会社に対する報告については、同契約に基づき必要かつ法令等に抵触しない範囲で行っています。また、同契約において、楽天グループ株式会社は、当行の業況が悪化した場合には当行の業務の健全かつ適切な運営を確保するために必要な措置を講じ、楽天グループ株式会社の業況が悪化した場合には、同社が当行に対して資本出資、融資等の支援を要請しない旨を規定しています。
なお、当行と楽天グループ株式会社及びその他の関係会社との主な関係等の詳細については、以下「②役員の兼任について」から「⑦楽天グループとの取引関係について」のとおりです。
② 役員の兼任について
当行の取締役のうち、三木谷浩史氏は、楽天グループ株式会社及びその主要な子会社の役員を兼任しています。当行の上場後の更なる成長を企図すると、楽天グループとのシナジーを追求することに加えて、楽天グループ外の顧客とのビジネスの更なる拡大を実現することが重要であると考えています。三木谷氏は株式会社日本興業銀行出身であると共に当行取締役の経験があり銀行ビジネスに対する知見が深く、さらに楽天グループ株式会社代表取締役会長、楽天カード株式会社の取締役会長及び楽天モバイル株式会社代表取締役会長を兼任する等、楽天グループ全体のビジネスを横断的に把握していることに加え、楽天グループ外の顧客とのビジネスの強化にあたっては、同氏は一般社団法人新経済連盟の代表理事を務める等、日本に留まらず海外にも幅広い人脈があることから、これらの豊富な実績、経験及び幅広い人脈が、楽天グループと当行の更なるシナジーの追求及び楽天グループ外における当行の事業基盤拡充に資すると考え、招聘したものです。なお、三木谷氏の就任は当行グループと楽天グループの相互に関連する人事案件に該当するため、予め特別監視委員会に諮問し、出席委員全員より異議がない旨の意見表明を受けています。
③ 従業員の出向及び兼任について
楽天グループ株式会社では、業務の効率性、事業上の必要性、人材育成及び各職員の将来像を踏まえたキャリアパス形成の観点から、積極的なグループ内での人材交流が行われており、当行においても楽天グループ株式会社を含めた楽天グループ内他社から出向社員を受け入れています。2024年3月31日時点で楽天グループ内の他社から当行へ出向している社員は99名となっています。当行全体に占める受入出向者の割合は1割程度となっており、受入出向者に依存した状況ではないと考えています。
なお、業務分掌を受けた組織体の責任者であるライン長(各組織体における組織長)以上の人事については、親会社からの独立性及び経営の安定性の観点から、出向関係を解消し転籍した者としており、継続的に出向関係のモニタリングを行い、出向期間は当行主導で決定できるようにしています。また、当行から楽天グループ内の他社への出向については、当行の事業上必要と判断するもののみ実施しています。
④ 楽天のブランド利用等に係るリスク
当行は、楽天グループ株式会社と経営基本契約を締結し、これに基づき、非独占的ブランドライセンス契約を締結して、「楽天」のブランド利用等を行っています。これに伴い、楽天グループ株式会社に対して、ブランドライセンス料を支払っています。
当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなる等の理由により非独占的ブランドライセンス契約の終了、解除又は変更がなされた場合には、「楽天」等のブランド利用等ができない、又は利用が制限される可能性等があり、この場合には、楽天エコシステムからの顧客獲得の減少や、当行が提供するサービスの知名度の低下、サービス利用の低迷による収益の低下等により、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、楽天グループ株式会社、その他の楽天グループ各社、又は当行グループにおいて、行政処分等に伴うマイナスイメージが生じた場合、商品やサービス等に対する不信感や不祥事等が生じた場合、必ずしも正確な情報に基づかない、又は憶測に基づいた報道や情報の流布がなされた場合等には、楽天グループ全体のブランドに影響が生じ、利用者の離反による収益の低下等により、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑤ 楽天グループ間の業務提携に係るリスク
当行は、楽天エコシステムとのシナジーを追求し、楽天グループの1億超ID(2024年3月現在)の強固な顧客基盤を活用した新規顧客獲得及び当行へのロイヤルティを高める施策を推進しており、楽天グループ株式会社とのポイントプログラムの提携等、楽天証券株式会社との口座連携(マネーブリッジ)、銀行代理業の委託、金融商品仲介業務等、楽天カード株式会社、楽天生命保険株式会社、楽天損害保険株式会社への銀行代理業の委託等、楽天グループ株式会社及びその他の楽天グループ各社との間で様々な提携を行っています。主な提携内容は以下「イ.楽天グループ経由の口座開設申込み」から「ハ.楽天ポイント」のとおりです。
イ.楽天グループ経由の口座開設申込み
2024年3月期における当行新規口座開設の約70%が、楽天グループ各社のホームページ・アプリ上に掲載している当行口座開設バナー広告経由での申込となっています。当行としては、楽天エコシステムを回遊する楽天会員は楽天グループが提供するサービスを利用していることから、口座開設後に稼働する可能性が高く、従って稼働顧客当たりの獲得費用を抑制可能であることから、楽天エコシステムを回遊する楽天会員からの口座開設申込獲得に戦略的に注力してまいりました。今後は、引き続き楽天グループ経由の口座開設申込の獲得に注力することに加え、当行の知名度向上による楽天グループ外チャネルからの口座開設申込の獲得、当行法人顧客の従業員の口座獲得等を拡大していくことを目指しており、結果として、楽天グループ外チャネルからの口座開設申込獲得の割合が漸進的に増加していくと考えています。
しかし、当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合には、楽天グループ内での広告活動の条件が変更され、又はこれまでと同様の広告活動ができなくなる可能性があり、その結果稼働顧客当たりの獲得費用を抑制し続けることが困難になる等、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
ロ.楽天証券株式会社との口座連携(マネーブリッジ連携口座)
2024年3月期末における当行個人預金残高の約80%が、楽天証券株式会社との口座連携プログラムであるマネーブリッジ連携口座の預金残高となっています。マネーブリッジ連携口座については、入出金の利便性の高さから多くのお客さまにご利用いただいており、マネーブリッジの普通預金の優遇金利についても、お客さまの支持をいただいていると認識しています。今後は、お客さまの多様なニーズに応えるために普通預金のマネーブリッジ以外の金利優遇施策を順次拡充していくことを検討しており、当行の業容拡大に伴い、マネーブリッジの優遇金利のみを目的とする預金の割合は、漸進的に低下していくものと考えています。なお、マネーブリッジ連携口座の預金残高のうち楽天証券株式会社の証券投資に利用されない資金は、お客さまの日常生活のニーズ等のために利用されており、マネーブリッジ連携口座の預金残高の多くはお客さまの日常生活のニーズ等に充当されています。
当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合には、当該連携の条件が変更され、又は継続できなくなる等、これまでと同様のメリットを享受できなくなる可能性があります。このような場合には、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
ハ.楽天ポイント
当行は、お客さまの当行サービスの利用や預金残高に応じてお客さまに楽天ポイントを付与する顧客優遇プログラム「ハッピープログラム」、デビットカードの利用額の一定割合をポイントでお客さまに還元するプログラム、当行の定める期間中に一定の条件を達成されたお客さまに対してポイントを進呈するキャンペーン・プログラム等、各種キャンペーンやプログラムを通じてお客さまに楽天ポイントを付与しています。また、楽天グループ株式会社のポイントプログラムであるスーパーポイントアッププログラム(以下、「SPU」という。)に参画しており、楽天市場で獲得できる楽天ポイントが増加する特典(①楽天市場での購買時に当行口座を口座振替口座として設定している楽天カードで決済すると+0.3倍、②当行口座を給与受取口座とするとさらに+0.2倍)をお客さまに提供しています。これらの顧客に付与する楽天ポイントに係る費用は、当行が全額負担しています。また、顧客に付与する楽天ポイントの経理処理について、顧客との取引金額や件数に直接連動して顧客に付与する楽天ポイントは、同取引の収益認識時点で楽天ポイント費用を収益より減額しています。それ以外のポイント費用については、費用発生時点において販売促進費として計上しています。なお、顧客が当行サービス利用時にサービス手数料等の全部又は一部に充当する楽天ポイントについては、当行は、利用ポイント相当額を楽天グループ株式会社に対して請求するため、当行に費用負担は生じません。また、当行は楽天ポイントに係るシステム等を利用するために楽天グループ株式会社との間で「グループコアアセットの利用等に関する契約」を締結しており、同契約に基づき、①当行の顧客に対する楽天ポイントの付与、②顧客の当行サービス利用時におけるサービス手数料等への楽天ポイントの充当に際して、ポイントシステム利用料(「⑦ 楽天グループとの取引関係について」内に記載のポイントシステム利用料)を楽天グループ株式会社に対して支払っています。
当行が、楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合には、当該プログラムの条件が変更され、又は継続できなくなる可能性があります。かかる場合には、当該ポイント特典と同等の経済価値相当のキャッシュバック等で代替することも考えられますが、当該代替策の効果が楽天ポイント特典の効果を下回った場合、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、楽天ポイント特典により得られる効果については、一定の条件のもと、楽天ポイントの活用から得られた利益と、当該活用に係る費用とを比較することにより定期的に検証し、その結果を特別監視委員会に報告することとしているため、その可能性は限定的ではあるものの、楽天ポイント特典により得られる効果が楽天ポイント特典の提供に要する費用を下回った場合、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑥ 楽天グループ内の金銭債権を裏付とした証券化取引に係るリスク
当行は、楽天カード株式会社のクレジットカード債権、楽天モバイル株式会社の通信料債権等の楽天グループ内の金銭債権を裏付資産とする信託受益権を購入しています。2024年3月期末における当該信託受益権残高合計は2兆2,924億82百万円となっています。当行は、個人向けのローンを拡充し、法人融資を拡大し、投資先の信用力とスプレッドを勘案して国債・政府保証債、事業債、外国債券等への投資を増加させる等、運用手段の多様化を進めていますが、当行が楽天グループ株式会社の子会社・関連会社等でなくなった場合、当行がグループ各社の金銭債権を証券化する機会が減少する等の可能性があり、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑦ 楽天グループとの取引関係について
当行グループでは、楽天グループ内の各社と取引を行っています。当行グループの独立性の観点を踏まえ、楽天グループ株式会社との経営基本契約の締結や非独占的ブランドライセンス契約の締結をはじめとする楽天グループとの取引及び行為の実行に際しては、当該取引の事業上の必要性と取引条件の妥当性等の取引内容について特別監視委員会に事前に諮問又は事後に報告し、社内規程に定められた決裁権限に則った手続を経ることとし、取引の健全性及び適正性を確保する体制を築いています。
2024年3月期における当行と楽天グループとの主な取引内容は以下のとおりです。
(当行と楽天グループ株式会社との取引)
取引の内容 | 2024年3月期 | 取引条件等の決定方法 | |
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取引金額 (百万円) |
期末残高 (百万円) |
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販売促進費の支払い | 10,549 | ― | 楽天ポイント付与に伴い発生するポイント費用の実額を負担しています。なお、顧客との取引金額や件数に直接連動して顧客に付与する楽天ポイントは、同取引の収益認識時点で楽天ポイント費用を収益より減額しており、取引金額は当該減額相当額を含む金額を記載しています。 |
ブランドライセンス料の支払い | 1,305 | ― | 当行グループ売上総利益の一定割合によっており、その料率は楽天グループ㈱と協議の上、合理的に決定しています。 |
ポイントシステム利用料の支払い | 2,338 | ― | 楽天ポイント付与額の一定割合によっており、その料率は楽天グループ㈱と協議の上、合理的に決定しています。 |
賃借料の支払い | 444 | ― | 近隣相場と同等の価格によっています。 |
(当行と楽天カード株式会社との取引)
取引の内容 | 2024年3月期 | 取引条件等の決定方法 | |
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取引金額 (百万円) |
期末残高 (百万円) |
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信託受益権の受取利息 | 17,455 | 2,152,451 | 一般の市場情勢を勘案し、楽天カード㈱と協議の上、合理的に決定しています。期末残高欄には信託受益権の引受残高を記載しています。 |
代位弁済受入額 | 7,991 | 208,037 | 独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で取引を行っています。期末残高欄には個人ローン債権に対する被保証残高を記載しています。 |
保証料の支払い | 12,062 | ― | 当行カードローン残高のうち楽天カード㈱を保証会社とするものに対する保証料の支払いであり、取引条件は一般に採用される保証料率を勘案し楽天カード㈱と協議の上、決定しています。 |
(当行と楽天証券株式会社との取引)
取引の内容 | 2024年3月期 | 取引条件等の決定方法 | |
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取引金額 (百万円) |
期末残高 (百万円) |
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決済及び金融商品仲介手数料等 | 4,881 | ― | 独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っています。 |
(当行と楽天生命保険株式会社との取引)
取引の内容 | 2024年3月期 | 取引条件等の決定方法 | |
---|---|---|---|
取引金額 (百万円) |
期末残高 (百万円) |
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保険料の支払い | 1,563 | ― | 独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っています。 |
(当行と競馬モール株式会社との取引)
取引の内容 | 2024年3月期 | 取引条件等の決定方法 | |
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取引金額 (百万円) |
期末残高 (百万円) |
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決済手数料等の受取 | 1,924 | ― | 独立第三者間取引と同様の一般的な取引条件で行っています。 |
3.当行グループの事業に関するリスク
① 事業戦略におけるリスク
当行は、顧客基盤の拡充により業容を拡大し、その顧客基盤を活用して手数料収益及び利息収益の増加を図っています。しかしながら、以下の要因により、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
イ.当行は、口座数及び預金量を重要な経営指標と位置づけており、今後も当行サービスの利便性と価格競争力を訴求することにより顧客基盤の拡充に努めてまいりますが、他のインターネット銀行との競争の結果として当行サービスが競争力を失ったことによりこの経営指標の伸びが減速・低迷した場合、当行グループの業務、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、インターネットバンキングをスマートフォンアプリを利用して取引する顧客が増加しており、当行は今後も顧客ニーズに応えるためにスマートフォンアプリの利便性・機能向上に努めてまいりますが、この顧客ニーズに適切に対応できない場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
ロ.当行は、独自の店舗・ATM網を有しておらず、そのためATMの利用に係る契約を他の金融機関等と締結することにより当行の顧客に対して現金の入出金サービスを提供していますが、この契約を締結している金融機関等との関係が悪化した場合、他の金融機関等と接続するシステムに不具合が発生した場合又は何らかの理由により他の金融機関等による当行のニーズに合致したサービスの提供が困難となった場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
ハ.当行グループは、新たな収益機会を得るために、銀行法の範囲内において積極的に新規事業への進出を検討しています。しかしながら、当行グループが未進出の業務分野に進出した場合や競争の激しい分野に進出した場合等において、業容の拡大につながらない又は当初想定した成果を得ることができない可能性があり、その結果、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
② 海外事業に係るリスク
当行は、台湾において銀行業を営む連結子会社を有しています。同社は現地における法令、自主規制等を遵守する必要があり、現地監督当局による検査、調査等の対象となっているほか、現地における政治、経済環境等の影響を受けます。当行は同社への役員派遣を含め、当行グループとしての同社に対するガバナンス態勢、コンプライアンス態勢、リスク管理態勢を構築していますが、今後、同社が法令・自主規制等に抵触し、現地監督当局による罰金、課徴金、業務改善命令、業務停止命令、許認可の取消等が行われた場合、同社を取り巻く政治・経済環境の変化、自然災害等の不測の事態が発生した場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、為替レートの変動により、当行グループの利益が減少する可能性があります。また、上記事由により同社の自己資本が大幅に毀損する事態となった場合には、当行が親会社として増資を含む支援を要請される可能性があります。
③ 中長期ビジョンに係るリスク
当行は、「第2 事業の状況 1 経営方針、経営環境及び対処すべき課題等 (3) 経営環境・経営戦略 2.経営戦略」に記載のとおり、2022年4月28日付で中長期ビジョンを策定し、公表しています。しかしながら、当該中長期ビジョンにおける成長戦略の実施や目標の達成は、本「事業等のリスク」に記載された事項を含む様々なリスク要因や不確実性による影響を受けます。また、当該中長期ビジョンは、策定時点における経済・事業環境の認識等様々な前提に基づくものであり、前提が想定どおりとならない場合等には、当該中長期ビジョンにおける成長戦略の実施や目標の達成が困難となり、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。
④ 自然災害及びパンデミック等に係るリスク
地震、台風、津波、豪雨等の自然災害、火災、停電、電力不足や異常気象、戦争やテロリズムその他の犯罪行為及びパンデミック等が発生した場合、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。これらの災害及びパンデミック等が発生した場合には、経済活動が停滞し、当行グループが提供するサービスに対する需要が減少する可能性があります。また当行グループの本店、出張所、データセンター等の拠点が、これらの災害及びパンデミック等により直接的又は間接的に被害を受けた場合には、物理的・人的な被害に加えて、通信ネットワークや情報システム等が正常に稼働せず、当行グループの事業継続が困難になる可能性があります。加えて、役職員の安全確保のため、状況に応じて役職員の出勤を制限又は停止する等、事業の運営体制を変更せざるを得ないことにより、サービスの低下が発生する可能性があります。
当行グループにおいては、これらの災害及びパンデミック等が発生した場合に備えて、事業継続計画(BCP)を策定し、定期的な訓練を通じて事業継続の確実性を高め、かかるリスクを最小限とするように努めていますが、災害及びパンデミック等の規模が想定を上回る場合には、準備している事業継続計画では対応できず当該リスクが顕在化し、事業継続自体が困難又は不可能となり、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。
⑤ 気候変動に係るリスク
2015年に採択された「パリ協定」を受けて、気候変動の原因とされる温室効果ガス削減の取組が世界的に加速しています。気候変動リスクは、主に気候変動に伴う物理的リスクと脱炭素社会への移行に伴う各種規制拡大等の移行リスクに大別されます。物理的リスクとしては、台風・豪雨等の異常気象による経済活動の低迷や担保価値の毀損による与信関連費用の増加が考えられます。また、CO2の排出を抑え、脱炭素社会へ移行することに伴い、当行グループが事業を営む日本及び台湾において、炭素税等の各種法規制が課せられる可能性があります。当行は、行内横断的な会議体としてサステナビリティ推進会議を設置し、脱炭素社会への移行をはじめとするサステナビリティへの取組に関する体制強化に努めていますが、これらの取組が奏功しない、もしくは不十分である場合又は各種規制への対応コストが増加した場合、当行グループの経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。
⑥ 情報システムに係るリスク
当行グループは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じて銀行業を営んでいますが、ネットワーク又はコンピュータシステム上のハードウェアもしくはソフトウェアの不具合・欠陥等により当行グループ、楽天グループ各社又は外部のサービスプロバイダもしくはビジネスパートナー企業等の第三者の情報システムに脆弱性又は不備が生じる可能性があります。加えて、役職員の過誤により正常なサービス提供に支障が生じる可能性があるほか、重要なデータの消失、機密情報の漏えい等が発生する可能性があります。
これらのリスク発生の回避及び軽減のため、監視体制を強化するとともに、通信ネットワークの複線化・システムの冗長化・データセンターの複数拠点の設置等の技術的・物理的にも各種対応策を講じていますが、かかるリスクが発現した場合には、当行グループのシステムが一時的に停止する等の事態が発生し、システム停止により顧客に生じた損害の賠償等をせざるを得なくなる可能性があります。また、監督官庁から行政処分等を受ける可能性もあり、かかる場合には、当行グループに対する社会的信用が毀損し、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑦ サイバー攻撃に係るリスク
当行グループは、コンピュータシステムを結ぶ通信ネットワークを通じてサービスを提供しています。そのため、ネットワークもしくはコンピュータシステム上のハードウェア又はソフトウェアの不具合、欠陥、コンピュータウイルス、フィッシングメール等による顧客に対する攻撃、外部からの不正な手段による当行グループのコンピュータシステム内への侵入等により情報システムの可用性、機密性、完全性を確保できない可能性があります。その場合、当行グループのサービスの不正な利用、重要なデータの消失、盗取等が発生する可能性もあります。
これらのリスク発生の回避又は低減のため、監視体制を強化するとともに、技術的、物理的にも各種対策を講じていますが、かかるリスクが発現した場合、当行グループに対する社会的信用の毀損、顧客の離反、損害賠償請求等が発生する可能性があるほか、監督官庁から行政処分等を受ける可能性があり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑧ 金融犯罪への対応
当行グループは、インターネットを活用した非対面取引を基本とした銀行としての特徴を有しており、口座開設時の取引時確認を厳格に実施しています。また、口座開設後の口座利用状況についても、モニタリングを実施しており、当行口座に係る金融犯罪の未然防止に努めるとともに、預金者保護に注力しています。しかしながら、急速な犯罪手法の高度化・巧妙化に対して当行が講じる対策が功を奏さない場合等において、当行グループの風評の悪化等により社会的信用が毀損される可能性があります。また、高度化した犯罪手法等に対応する追加施策の実行に伴う費用の発生等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑨ 個人情報漏えいに係るリスク
当行グループは、銀行業を営んでおり、個人情報を含む顧客情報を保有しています。当行は、「個人情報の保護に関する法律」に規定される個人情報取扱事業者として同法に基づき、個人情報の利用目的の公表又は通知、個人データの安全管理に十分に留意し、本人からの保有個人データの開示請求等に適切に対応する態勢を整備しています。また、その旨を「個人情報保護細則」に規定し、役職員に対する周知を徹底しています。さらに、外部委託先が当行の個人データを取扱う場合は、全国銀行個人情報保護協議会「個人データの安全管理措置等に関する指針」にて「委託契約において盛り込むべき安全管理に関する内容」として列挙された事項を含む内容の契約を締結することとし、個人情報を含む顧客情報を厳格に管理しています。しかし、情報漏えい等が発生し、顧客に甚大な被害を及ぼす結果となった場合には、当行グループに対する社会的信用の毀損、顧客の離反、損害賠償請求等が発生する可能性があるほか、監督官庁からの行政処分を受ける可能性があり、当行グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。
⑩ 訴訟に係るリスク
当行グループは、日本及び台湾において銀行業を営んでおり、付加価値の高いサービスを幅広く提供しています。こうした業務を行うにあたり、システム障害等によって損害を与えた場合や、第三者の知的財産権を侵害した場合等においては損害賠償請求訴訟等が提起され、損害に対する補償が必要となる可能性があります。当行グループでは、適宜、弁護士等をはじめとする外部専門家からの助言及び監督当局への事前相談すること等により、適切かつ適法なサービスの提供に努めていますが、全ての訴訟等の可能性を排除することは困難であり、かかるリスクが顕在化した場合には、その訴訟等の内容、請求額によっては大きな損失が発生し、また、当行グループの社会的信用が毀損される結果となり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑪ 風評に係るリスク
当行グループの事業は、預金者を含む顧客等からの信用・信頼の上に成り立っているため、これを維持・向上することが重要であると考えていることから、当行では、当行の業務に関連して現実に生じた各種のリスク事象や、事実と異なる事象により生じた報道や風説により、当行の業務が阻害されて被るリスクをレピュテーショナル・リスクと定義し、当該リスクの管理体制を構築しています。しかしながら、当行グループの風評がマスコミに報道されたり、インターネット上の掲示板への書き込み等により拡散された場合には、仮にその風評が事実と異なるものであったとしても、顧客等が風評を信じて当行グループについて事実と異なる認識を持つ可能性があり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑫ 監督官庁の規制等
当行は、銀行法第4条第1項の規定に基づき、銀行業を営むことについての免許の交付を受け、預金、為替、貸付業務をはじめとする種々の業務を営んでいます。また、銀行業については、有効期間その他の期限は法令等で定められていませんが、銀行法第26条において業務の停止等及び同第27条において免許の取消し等の要件が定められており、当該要件に該当した場合、業務の停止、又は免許の取消しを命じられる可能性があります。
現時点で、当行はこれらの事由に該当する事実はないと認識していますが、将来、何らかの事由により業務の停止、免許の取消し等の処分を命じられた場合には、当行グループの主要な事業活動に支障をきたすとともに、事業、経営成績及び財政状態に重大な影響が生じる可能性があります。
上記に加えて、当行グループは、大口信用供与等規制、業務範囲規制及びアームズ・レングス・ルール等の銀行法上の様々な規制、金融商品取引法及び信託業法等その他の金融関連法令、これらに関連する監督官庁の監督指針及び業界団体の自主規制等の適用を受けています。これに関連して、当行は監督官庁や自主規制機関等による監督を受けており、かかる監督による措置には行政処分、指導、立入検査、ヒアリング、オンサイト・オフサイトでの資料の徴求等が含まれます。当行に、法令等の違反、法解釈等の相違及びその他の何らかの事由により監督官庁による行政処分、指導、立入検査等における指摘等又は自主規制機関による処分等がある場合、また、当行サービスに影響のある金融関連法令、監督指針、自主規制等の改定及び新たな規制の導入が行われる場合には、当行グループの事業、経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑬ 自己資本比率が悪化するリスク
当行は、「銀行法第14条の2の規定に基づき、銀行がその他保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準(平成18年金融庁告示第19号)」に基づき自己資本比率を算出しており、国内基準行である当行は、4%以上の自己資本比率を維持することが求められています。
当行は、本「事業等のリスク」の状況を踏まえ、適切かつ十分な水準の自己資本比率を維持することに努めていますが、記載している各種リスクが顕在化した場合、又は将来的に当該規制等が変更となった場合には、自己資本比率が低下する可能性があります。また、自己資本比率が4%を下回った場合には、金融庁より、営業の全部又は一部の停止を含む行政上の措置が課される可能性があり、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑭ 格付に係るリスク
当行は格付機関による格付を取得していますが、当行の業績や風評の動向、親会社である楽天グループ株式会社の動向等により、格付機関が当行の格付を引き下げた場合、資金調達における取引条件の悪化、市場関連取引における追加担保の差入、既存取引の解消等が発生する可能性があり、当行の資本・資金調達等に影響が生じ、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。また、楽天グループ株式会社又はその他の楽天グループ各社の格付が引き下げられた場合にも、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑮ 人材に係るリスク
当行グループは、高度な専門性を有するインターネットバンキングを中心とした銀行業務を行っています。このため、有能な人材の確保及び育成に努めていますが、人材の採用にあたっては、他の金融機関のみならず、インターネットサービス関連企業やシステム関連企業との競合を余儀なくされることから、必要な人材の確保ができない場合には、当行の競争力が低下し、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑯ コンプライアンスリスク
当行グループは、銀行法、金融商品取引法、信託業法、会社法等の各種法令、監督当局や自主規制機関の定める諸規則等に基づいて業務を行っており、法令等遵守を経営上重要な責務と位置づけ、コンプライアンス態勢を強化し、法令等遵守の徹底を図っています。しかしながら、役職員が法令、諸規則等を遵守しない、又は不正行為等を行った場合等には、監督当局による行政処分、罰則の適用、顧客からの信頼の低下等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
また、当行は、監督官庁により発出された「マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策に関するガイドライン」にて金融機関に求められるマネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策(以下、「マネロン対策」という。)について態勢を整備するとともに、「外国為替取引等取扱業者遵守基準」及び「外国為替取引等取扱業者のための外為法令等の遵守に関するガイドライン」にて求められる経済制裁措置に違反するもしくは違反するおそれのある又は規制に該当することを免れるために偽装された取引等を行うリスクへの対策(以下、「制裁違反リスク対策」という。)についても態勢を整備したため、現時点で必要なマネロン対策・制裁違反リスク対策を講じていると認識しており、今後も適切な態勢の整備に努める所存でありますが、これらのマネロン対策・制裁違反リスク対策が有効に機能せずに、法令等の違反が発生した場合、又は当行のマネロン対策・制裁違反リスク対策について監督官庁が要請する水準に達していないと判断された場合には、監督当局による行政処分、罰則の適用、顧客からの信頼の低下等により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑰ 信用リスク
当行グループでは、個人顧客及び法人顧客に対する貸付債権、国債・社債等の有価証券並びに楽天グループ内外の金銭債権等を裏付資産とする信託受益権等を保有しています。このため経済状況が悪化した場合、債務者・債券の発行体の信用状況が著しく悪化した場合等には、当行グループが保有する貸付債権、債券及び信託受益権の原資産の信用力が低下し、元利金等の支払いが不履行となる可能性があります。この結果、当該貸付債権及び信託受益権への引当金の増額や保有する有価証券の市場価格の下落に伴う損失を計上する可能性があります。
また、当行は、個人顧客に対する貸付債権に関しては外部信用情報機関を利用した途上与信を含む与信管理を行い、法人顧客に対する貸付債権に関しては継続的な顧客の業況確認等による与信管理を行い、保有する信託受益権に関しては継続的な原資産のパフォーマンスの確認等によるモニタリングを行い、保有する有価証券に関しては定期的に発行体の業況及び有価証券の市場価格の確認等によるモニタリングを実施し、信用リスクの低減に努めていますが、想定以上の経済状況の悪化、債務者の業況悪化等が発生した場合のほか、日本銀行が2024年3月にマイナス金利政策を解除したことに伴って当行の貸出金利が上昇する可能性があり、これにより元利金等の支払いが不履行となる貸付が増加した場合には、貸倒関連費用の増加等、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
加えて、市場リスク及び為替リスクをヘッジするために実施しているデリバティブ取引については、カウンターパーティーリスクがあり、カウンターパーティーの義務の不履行が生じた場合には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑱ 金利リスク
当行グループは、国債、政府保証債、事業債等の市場性のある有価証券及びデリバティブ等が組み込まれた金融商品を保有しています。これらは、金利変動により価格の変化が生じるため、当行では、運用調達業務全般にわたり、資産・負債構成の最適化及び適切な水準の自己資本充実度の確保を目的とし、金利感応度、資金流動性、市場流動性等に留意したALM(資産負債総合管理)運営を行っています。しかしながら、日本銀行が2024年3月に長期金利操作(イールドカーブ・コントロール)を撤廃したことをはじめ、今後の国内外の金融政策の変更、債券等の格付の低下、国内外の市場の混乱、金融経済環境の悪化等により金利が変動した場合、評価損、売却損等が発生することにより、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑲ 為替リスク
当行グループは、外貨建資産及び負債を保有しており、必要に応じて、為替リスクを回避することを目的としたヘッジ取引を行っていますが、為替レートが急激に変動した場合には、多額の為替差損等の発生により、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
⑳ 決済リスク
当行グループは、国内外の多くの金融機関と多様な取引を行っております。大規模なシステム障害や災害が発生した場合又は政治的な混乱等により金融システム不安が発生した場合には、取引相手である金融機関との間で決済が行われない又は決済が遅延する等、決済が困難になる可能性があります。また、非金融機関の取引先との一定の決済業務においても取引先の財政状態の悪化等により決済が困難になるリスクがあります。加えて、当行が購入する信託受益権の証券化スキームにおいて、信託受益権の組成及び購入に関する一連の決済が想定通り実行されず、支払った購入代金の回収が必要になる可能性があります。
当行グループでは、勘定系システム等の重要なシステムについては、バックアップサーバーを分散して設置するとともに、定期的な訓練を実施する等、システム障害や災害発生時に迅速に対応できる体制の構築に努めているほか、日中の流動性について定期的なモニタリングやストレステストの実施等、当行グループの決済が滞らないよう管理する体制や、非金融機関の取引先と一定の決済業務を行うにあたり、必要に応じて取引先の財政状態を適宜把握する体制を構築しています。また、買入金銭債権の購入代金の回収に係る社内規程・マニュアルを整備し、当行の自己資本額に比して過大な回収リスクを負うことを避けるオペレーション上の対応も実行していますが、これらの対策が不十分な場合又は当行グループの想定を逸脱する事態が生じたことによりこれらの対策が有効ではなくなった場合等には、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。
㉑ 流動性リスク
当行は、インターネットを活用した銀行サービスを提供しており、ATMでの普通預金の引き出し、定期預金の解約及び他の金融機関への送金又は振込サービスを24時間365日(システムメンテナンス時間帯を除く)提供しています。当行は、このような当行の預金の特性を踏まえて手元流動性を含めた資金流動性リスク管理体制を構築し、流動性に十分配慮した運用を行っていますが、経済環境の悪化や当行の風評に悪影響を与える不測の事態が発生した場合には、予想を超えた著しい資金流出が予想を上回る速度で進行する可能性があり、当行グループの経営成績に影響が生じる可能性があります。
㉒ 事務リスク
当行グループは、事務に関する社内規程の整備、事務のシステム化、事務処理における再鑑の徹底、自主点検による部署内の事後チェック、業務改善への取組等により、堅確な事務処理体制の構築・運用に努めていますが、人的な対応が必要な業務においては、役職員等が事務に関する社内規程等に定められた事務手続を怠る等により、事務面での事故、不正等が発生する可能性があります。
また当行グループは、当行グループの急速な顧客基盤の拡大による取引件数の増加、新サービスの導入等による事務量の増加により、業務遂行に必要な体制整備が追い付かずに、事務手続のミスの発生、事務の滞留等の可能性があります。この結果、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能があります。
㉓ リスク管理の有効性に係るリスク
当行グループは、リスク管理方針を策定し、同方針に基づき管理態勢を整備し、運用していますが、金融市場においては急激かつ大規模な変動や混乱が発生する可能性があり、これを正確に予測することは困難であることから、リスク管理が有効に機能しない可能性があります。また、急速な事業展開や業容拡大に伴い、リスク管理が有効に機能しない可能性があります。この結果、当行グループの経営成績及び財政状態に影響が生じる可能性があります。これらのリスク発生の回避又は軽減のため、原則、半期に1度、当行の事業展開や業容拡大に伴う当行のリスクプロファイルの変化を把握し、管理すべきリスクの網羅性及びリスク管理手法の妥当性について検証を行っています。
4.当行株式に関するリスク
当行は、2023年4月21日付で東京証券取引所プライム市場へ上場しており、上場に際しては、公募増資及び楽天グループ株式会社による当行株式の売出しによって当行株式の流動性の確保に努めました。また、2023年12月の楽天グループ株式会社による当行株式の売出しによって、同社の当行株式の保有割合は49.26%となりました。今後も、当行の事業計画に沿った成長資金の公募増資による調達や当行親会社である楽天グループ株式会社への一部売出しの要請による流通株式数の増加等により、引き続き流動性の向上を図っていく方針ではありますが、市場環境や何らかの事情により流動性が低下する場合には、当行株式の市場における売買が停滞する可能性があり、それにより当行株式の需給関係にも悪影響を及ぼす可能性があります。