新・楽天銀行FX 口座開設者限定レポート 身につけよう! ~FXで失敗しないための7つの力~

第3章 精神力 【知る】ことで、意志の力を強くする 3

2つの知恵で意志力を高める ~「言語インパクト」と「カクテルパーティ・バイアス」の話~

この章では、お金が投資家に与える影響や、意志の力を補填する方法などを書いてきました。
本章の最後にお伝えしたいのは、相場関連の情報に伴う高揚感や不安感を、マーケットの過去の経験則で平準化することです。
具体的には、「言語インパクト」と「カクテルパーティ・バイアス」(近視眼バイアス)の2つです。
これらを知ることで、ある種の情報に対する「不必要な不安」を取り除くことができると思います。

「言語インパクト」を意識して、ニュースのインパクトを平準化させよう

投資において情報というものは非常に重要なものです。
「買い」、「売り」両面から仕掛けられるFXにおいては、どこかの国や経済にとって悪いニュースであっても、投資家には仕掛けるタイミングとなることがあるでしょう。
たとえば、戦争や紛争、テロ、破壊活動、などです。
世界経済にとっても人道的にも、またその地域にとっても、いいニュースとはいえないでしょうが、FX投資家にとっては少なからず投資判断になる材料ではあります。

ところで、あなたはこれらの単語を聞いて、どのように感じますか?
感覚として、他のニュースよりもインパクトが強いと感じられたのではないでしょうか。
言語インパクトとは私の造語です。その意味するところは、情報を構成する言葉や映像の持つインパクトの大きさのことです。
言語インパクトの大きなニュースは、それだけで投資家の心理に大きな影響を及ぼします。実際、通貨だけでなく、株式などあらゆる銘柄を所有している投資家が、この時点で手仕舞うケースはよくあるでしょう。
不確定要素が大きい場合、投資家心理としては不安感が台頭するので、当然といえば当然でしょう。
ただ実際には、現代において有事がマーケットに及ぼす影響は、限定的であることがほとんどです。
過去の事例を見てみても、たとえば、米国の911同時多発テロの直後、ドルはパニック的に売られたものの、翌月にはそのほとんどが買い戻されています。

ドル円チャート(日足) 2001/09/01~2001/10/31

  • 終値ベースでみると、セプテンバーイレブン(2001/09/11)時、1ドル119.58円であり、混乱の最中、同月20日には116円まで円高に推移したものの、27日には119円台に乗り、10月には120円台を回復している。

2005年のロンドン同時爆破事件の時も、ポンドが売られたものの、翌日にはほぼ全面回復しています。

ポンドドルチャート(日足) 2005/06/01~2005/08/31

ロンドン同時爆破テロ時も、センセーショナルな報道の反面、為替は比較的安定的にボックス圏内を推移していることがわかる。

また、湾岸戦争、イラク戦争などに関しても同様の傾向が見られますし、継続的に勃発するイスラエルや中東情勢の悪化に伴うデモや襲撃なども、その多くは短期的な材料としてのみ捉えられ、いったんは売られるものの、その後すぐに買い戻される傾向があります。

テロ、紛争、戦争などは、テレビやネットで見る言葉や映像のネガティブインパクトの強さを私たちに与えますが、実は、実体経済に与える影響は、限定的なのです。

なぜ、このようなことが起こるのか?

有事は、ある日突然起こりません。
ニュースなどを見ていればわかりますが、実際に戦争が始まる前に、「戦争、テロ、紛争が、始まるかもしれない」というニュースが必ずといって良いほど流れます。それも、毎日のように。

マーケットはその過程の中で、投資家の不安感と閉塞感を織り込んでいきます。
この「なにかが起きるかもしれない」という市場を取り巻く雰囲気のことを「先行き不透明感」といいます。
投資家の不安感を完全に織り込んだ相場であれば、紛争の開始と同時に、下落するどころか、先行き不透明感の払拭と同時に、市場は上昇すらします。

そもそも、現代の戦争や紛争はあまり長期的なものにはなりません。
短期的な終結を見込みながら、投資家の不安感は払拭されていくのです。
ですので、投資家としては、過度のこういったニュースを不安視する必要はないわけです。
言語インパクトの強いニュースは、投資家の心を乱し、不安を増大させます。
意識して平準化していきましょう。

FX豆知識:有事のときのドル買い

ちなみに、戦争など有事が思っていたよりも長期化しそうだ、という風なコンセンサスが台頭したときは、相場は下落する傾向にあります。これは、投資家はもとより、消費者マインドに悪影響を及ぼし、タイムラグが少ない経済指標にネガティブインパクトを与えてしまうからです。
なお、FXの豆知識として、(もちろん一概にはいえませんが)、有事の時にはドルが買われるということは念頭に置いておきましょう。
これは結局、「アメリカ経済が世界中から信用されている」からと考えられます。

多くの市場参加者が、
「ドルは何が起きても、急落しない」
「今のドルの価値は、米国の高い経済力に拠っている」
「軍事力もあるから戦争が起きても平気だ」
という風に思っているからこそ、ドルが主要通貨になり得ているのです。
逆に、世界中の人々が、「ドルよりも『円』の方が、もしもの時に安心だ」とか「米国よりも日本の方が経済力は上だ」という風に思えば、主要通貨はドルから円に切り替わる可能性もなくはないです。

金融恐慌後、米国の経済の低迷を受けて、「主要通貨が代わるか?」という議論が起こり、中国の元が主要通貨になるということこがまことしやかにささやかれた時期もありましたが、今のところ、ドルが世界の主要通貨だということに変化はありません。

カクテルパーティー・バイアス

「カクテルパーティー効果」というものを聞いたことがあるでしょうか。
カクテルパーティーのように、たくさんの人がそれぞれに雑談している中でも、聞きなれた自分の名前などは、自然と聞き取ることができるという「選択的注意」効果の代表例です。
ある調査によれば、自分の名字を呼ばれたときは、通常時の3倍ほどの聴力になるそうです。テレビをつけながら部屋の掃除をしているときなどでも、テレビに注意など向けていないにもかかわらず、出身地のニュースが流れたとたん「おや?」と意識を向けることはあるでしょう。

投資における情報選別においても同様なことがいえます。
自分が仕事上属する業界の関連ニュースや、自分がポジションをとっている通貨に関するニュースは、多く目や耳に止まります。
そして“自分にとって”大きな投資判断になることもあります。
それはある種健全でごく自然なことなのですが、しかしここで忘れてはならないのが、自分が興味を持ったからといって、その他大勢のマーケット関係者が同様の興味と判断を行っているわけではないということです。
カクテルパーティ効果としてのバイアスがかかっていることを意識するだけで、情報の価値を平準化して考えることができ、投資判断における不安定感を除外することができます。

分析の基礎:ファンダメンタルズ分析

さて、次章はいよいよFX投資におけるファンダメンタルズ分析の説明をしていきます。
まずは、ほかの指標との関係の話をします。
・金利とインフレ率の関係
・さまざまな外的要因
・株式と為替相場の関係性
・債券と為替相場の関係
・コモディティと為替相場の関係
など、どのように他の金融商品と関係しているのかを学んでいきます。

また、重要な経済指標に関しても細かく記載していく予定です。
・フロー指標とストック指標
・経済指標の判断の注意点
・GDP
・景況感指数
・貿易収支
・雇用統計
・消費者物価指数
・製造業指数
・住宅系指標
また、それぞれの通貨の特性も知っていきましょう。

ドル、ユーロ、円、ポンド、フラン、ニュージーランドドル、中国人民元、オーストラリアドル、南アフリカランド、カナダドルなどなど、主要通貨の特性を知ることで、投資の判断に幅が出てくるはずです。

きっとあなたの投資能力向上の助けになると思いますので、ぜひとも楽しみにしておいてください。