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第6章 読解力 文脈からマーケットを読み解く 1

経済に関するニュースは、相場関係者の間で独特の捉えられ方をします。

もっともわかりやすい例が、FRBによる連邦公開市場委員会(FOMC)でしょう。

FOMCはアメリカの金融政策を決める非常に重要な委員会であり、会議が終わったあとの声明は、世界のマーケットに大きなインパクトを与えます。

ただ、FOMCの声明を言葉通りに捉えても、実はあまり意味がないのです。

FOMCは、ニュースを読む側と読まれる側の心理、発表されたときに相場に与えるインパクトなどを考えながら、報道サイドに言葉を伝えていきます。

報道サイドや市場関係者も、このFOMCの意図を十分に汲みながら、報道していきます。

たとえば、2007年頃から始まり、世界経済に大きな悪影響を与えた「世界金融危機」以後、FOMCは声明で、発表の都度、経済は「弱まっている」、「収縮している」、「減速している」というネガティブな表現を使い続けてきました。

しかし、それから2年後の2009年8月13日、FOMCは声明で、「経済活動が横ばい状態になる兆しが見られる」との認識を発表しました。そのとき、FOMCは声明において、ネガティブな単語を一切使わなかったのです。

このニュースのポイントは、「横ばい」とはいえ、ポジティブなニュースが出た、ということではなく、「それまでFOMCがネガティブなことを伝え続けていた」という事実です。

それまでFOMCがネガティブなことを伝え続けていたということは、情報のインパクトを読む上での土台のようなものです。

いつもポジティブなことを言う人が、通常通りポジティブに振舞うよりも、いつもネガティブなことをいう人が急に前向きになったら、「何かある」と思うのが普通ではないでしょうか。

FOMCは、そういった言葉と相場の相関関係を見越しながら声明を発表したのです。

事実、この発表後、当日の朝から好調だったNYダウはさらに一段高となり、引けでは120ドルを越す大幅高となりました。同時に、為替市場もこの状況は好感され、ドルは対円で買われ、一時96円80銭まで上昇しました。

下表が、FOMCが過去に実際に使い、かつ相場で重要視された単語の一覧です。

世界経済のニュースで、知っておきたい単語一覧

カテゴリー 単語 意味 意図、市場の見方
キーワード monitor 監視する 「Mワード」と呼ばれ、主要政策金利であるフェデラルファンド(FF)金利を、定例のFOMC前に引き下げることも辞さない意志を示すとされるキーワード
measured 予測可能な形での慎重な 13回目の連続0.25%利上げを行っていたときにFRBが毎回声明に活用していた単語。FRBがFOMC後の声明文に「measured」という単語を入れ始めたのは、ウォール・ストリート・ジャーナル紙によれば2004年の5月。
measured pace 予測可能な形での慎重なペースで 同じく、連続利上げの際に活用していた単語。この2単語の意味することは、FOMC会議が開かれるたびに実施される規則正しい0.25ポイントの短期金利引上げ。この二つの単語が声明からなくなってしまえば、それは金利引き上げサイクルが終わりに近い証明になると見受けられていた。
inflation インフレーション 07年後半のFOMC声明でよく活用されていた単語。11月の声明文の主要部分143語中、「インフレーション」という単語が5回登場、これは10月の前回声明と同じ回数で、前々回の9月18日声明における回数(3回)よりも多く、この間FRBはインフレへの警戒感を強めていたと見られている。
Strong Vigilance 強い警戒 利上げ前の声明によくみられる。2005年から始まる利上げ局面では、トリシェ総裁は利上げの前月に「強い警戒」との言葉を使うことにより「利上げシグナル」を発し、市場との対話をはかってきた。
on the accommodative side 引き続き緩和的 07年10月、トリシェ総裁の会見からこの単語が消えたことで当面は利上げしないというスタンスを明確に出し、市場が注目。それまでのECBは「金融政策は引き続き緩和的」との基調を示していた
忌み言葉 recession 景気失速 R-word(Rで始まる忌み言葉)とも表現される忌み言葉単語。これを用いる場合はかなり劇的な発言。
bankrup 破産 B-word=Bで始める忌み言葉。バーナンキが使ったことはないようだが、市場でしばしばささやかれる言葉。メリルリンチはレポートでB-wordがnot impossible(不可能ではない)と表現。
強い単語 contract 縮小する 経済状況に対する表現の1つ。
appreciably  明確に認識できる形で 経済状況に対する強調表現の1つ。
sharply 急速に 米FOMC声明にて米景気が「appreciably」(明確に認識できる形で)に、そして「 sharply」(急速に)に悪化しており、それに対しては「rapid」(早急に)で「forceful」(力強い)対応をすると表現
rapid 早急に 経済に対するFOMCのスタンスを表す言葉。
forceful 力強い 経済に対するFOMCのスタンスを表す言葉。
substantial かなりの量の、多くの、大量の 強調表現。住宅市場の冷え込み(cooling)についてsubstantial(かなりの量の、多くの、大量の)という表現を加え、住宅市場への懸念を強調(partly reflecting a substantial cooling of the housing market)
attentive to よく注意している 経済に対するFOMCのスタンスを表す言葉。今まであまり金融関係で当局者が使ったことはない。ドル安進行中の発言だったため、「ドル安はインフレ対策の上で好ましくない」というシグナルとしてとられその後ドル高になった
その他注目された言葉 mixed まちまち 経済指標などが強弱入り混じったようす。
conditions that may generate economic weakness 経済の弱さを招来する状況 「予見しうる将来」に関して「経済の弱さを招来する状況」(conditions that may generate economic weakness)が生ずるリスクをFRB が認識するに至った点が注目された。前回まで約半年間は、「the risks are balanced with respect to the prospects for both goals」と両にらみとなっており「中立」だった
has been prolonged 長引いている 経済状況に対する表現の1つ。
carefully 注意深く 経済に対するFOMCのスタンスを表す言葉。
appreciably 目に見えて 経済状況に対する強調表現の1つ。
to has picked up 上向いた 09年9月のFOMC声明で米経済について言及された表現。前回の「横ばい状態(leveling out)」から「上向いた(to has picked up)」に変更したところが注目された
all available tools すべての手段 FOMCは08年12月の声明文で明らかにした経済対策への強い意志の表れ。「すべての手段(all available tools)」を講じる意志を鮮明にした
probably over 恐らく終わった バーナンキが09年9月の米議会証言で「米国のリセッションは恐らく終わった(probably over)」とコメント。同氏は8月21日に「米経済はリセッションから脱却しつつある」と述べており、”脱却しつつある”→”終わった”と明らかにその見通しが改善している。
flexible 柔軟性のある 07年11月、コーンFRB副議長がこの単語を用いて「場合によっては12月も利下げする」と発言。その翌日バーナンキもこの単語を用いて「例外的に柔軟になるかもしれない」と発言、12月の利下げ観測を招いた
forestall 未然に防ぐ 経済に対するFOMCのスタンスを表す言葉。

FOMCは年に8回(原則6週間毎の火曜日)開催され、その2日後の木曜日に議事録が声明として発表されるスケジュールになっています。

発表されたあとは各メディアで全文が掲載され、主だった金融機関のエコノミスト、ストラテジストらが、その声明をそれぞれのインテリジェンスを持って読み解いていきます。

どの意見が正しいかというよりも、それらエコノミストの言葉から、ニュースの読み解き方を学べますので、ぜひニュースとそれらの分析を見極め、相場への理解を深めていってください。

  • 第5章 テクニカル分析
  • 1
  • 2
  • 3
  • 第7章 総合力