第2章 情報力 マーケット情報収集の【3つのコツ】を掴む 3
【物語化する技術】で、正確でスピーディな投資判断を
自分で判断できれば、自然と投資効率は上がっていく
2章の1部、2部では、調べる技術、震度を測る技術を学んできました。
今回は、「物語化する技術」です。
この技術は、簡単に言えば、調べたいくつかの情報をつなぎ合わせ(物語化することで)、自分の投資予測を作っていく技術です。
「投資予測なんてどこにでも載っている。それを調べればいいのでは」
そんな意見もあると思います。
一理あります。
なにを隠そう、私も以前はそんな仕事をしていました。
書きものを職業とする「マーケット記者」や「アナリスト」という仕事人は、こういったコンテンツを作るプロです。
では、そのプロは、どのような気持ちで、投資予測を書いていると思いますか?
まずは、そこから説明していきましょう。
投資予測はどのようにして作られるか?
~職業予測屋がストーリーを作るとき~
インターネットが台頭している現代、フラッシュニュースには、ほとんど情報としての価値がなくなりました。
フラッシュニュースとは、たとえば、ドル円がいくらになったとか、経済統計がいくらになったとか、そんな類の情報です。
確かに新聞やテレビが情報収集のメインだった時代は、フラッシュニュースをいかに早く掴み取るかということに価値があった時代がありました。
でも今は、情報が出たとたん、少なくとも数分後には、どこのサイトからもフラッシュニュースを見ることができますよね。
これは以前の章でもお話したことです。
ということは、「フラッシュニュースをできるだけ早く市場に出す」という情報ビジネスは、ほぼ崩壊しているということです。
みなさんも、いまやお金を出してフラッシュニュースを読もうなんてことは考えもしませんよね。PCでもスマホでも、検索すれば数秒で出てくるのですから。
では、投資関連のプロの書き手はどのように自分の付加価値をつけていくのでしょうか?
それは、情報と情報をつなぎ合わせて、投資予測という「商品」を作るということです。
このように、投資予測とは、あくまでプロの書き手たちが自らの提供する情報に付加価値をつけるために作った「商品」なのです。
もちろんそれ自体が、悪いといっているわけではありません。
確かに、マーケットのプロが、兼業投資家より多くの時間をかけて、頭をひねって作った投資予測が、まったくの無益だとは言いません。
でも、ちょっと考えてみてください。
あなたがよくネットなどで見かける投資予測の有名人の肩書きには、「どこかの会社の看板」がかけられていませんか?
企業に属する記者、アナリストがかけるバイアス
言ってしまえば、投資予測を書いている人の多くは、企業に属するビジネスマンとしての立場を踏まえながら、記事を書いているのです。
これを読んでいるビジネスマンの方なら想像に難しくないでしょうが、職業人である記者やアナリストには、以下のような思惑があります。
- マーケットイン型記事
~真実よりも、投資家が"喜びそうな"記事を書くべきだ~ - センセーショナル型記事
~市場に"出回っていない" "刺激的なもの"記事を書くべきだ~ - ジョブセキュリティ型記事
~担当するセクターや商品を"推奨する"ような記事を書くべきだ~ - サラリーマン型記事
~自分の会社やスポンサーの販売商品を"押し出す"記事であるべきだ~
なお、企業に属さず、もしくは自分の会社を運営しつつ、投資予測で有名なアナリスト、ストラテジストたちもいます。しかし、そういった方たちは非常に有能で有益な情報を与えてくれる半面、自分のポジショントークを守り抜くプライドに満ちている傾向があります。
- ポジションキープ型記事
~何があっても、自分のポジショントークを"崩さない"記事を書くべきだ~
ポジショントークとは、自分のポジションに有利な情報や見通しを述べることで、じつはメディア業界において、自分の商品価値を高めるひとつの手段なのです。
誤解のなきようもう一度書きますが、すべての記事がそういった思惑を持っているとはいいません。正直で有益になる記事もたくさんあることも事実です。
しかし、こういった一種の思惑を持った記事がわれわれ投資家の身の回りに多く存在していることも、また事実です。
あなたは、それぞれを見破ることができますか?
見破れるのであればここから先を読む必要はありません。
見破る自信がなかったとしても、答えはカンタン。
もう、あなたの頭の中にあるのです。
思惑をはらんだ記者やアナリストの記事を読む前に、まずは自分の頭で、予測記事を書いてしまえばいいということです。
そうすることで、一歩先んじた投資をすることができます。

自分で【物語を作る力】 初級編
~まずは王道のストーリーを構成する~
自分でニュースをつなぎ合わせ、物語化するためには、ちょっとだけ勉強が必要です。
FX投資の場合、まず初級編で知っておくべきは、マクロ経済の基礎でしょう。
「マクロ」という言葉にアレルギー反応が出てしまうかたも多いかもしれません。
でも、FXは他の投資手法と比較すると、シンプルな構造で価格変動する類のマーケットといえます。
たとえば、株式投資では、企業決算が読めなければいけませんし、その流れと仕組みを知らばければいけません。また、多くの投資家が参考にしている日経新聞の業績見込み、その上方・下方修正。新製品や新規事業、はたまた社長交代やリストラなどの情報を逐一チェックしなければなりません。
FX投資はどうでしょうか?
一概には言えませんが、一般的なマクロ要因としては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- 為替政策
- 金利政策
- 経済指標
細分化していけばもっとありますが、FXは株式投資などと比べるとずっと少ない材料で動くといえます。
あとは、物語化するために、これらの構造を知っていればいいのです。
一例として、経済指標の報道から発想をスタートしていきましょう。
たとえば、「日本のGDP成長率が上昇した」というニュースが流れたとします。前回の震度を測る技術で書いたとおり、GDPは非常にマクロ的インパクトの大きな経済指標です。
王道のストーリーとしては、日本のGDP成長率が上昇したというニュースから、まずはこのように物語をつむいでいくでしょう。
【GDP成長率上昇の報道】
↓
【人々の心から不安が消える】
↓
【財布のヒモがゆるくなる】
↓
【いろんなモノやサービスが売れる】
↓
【企業の業績がよくなる】
↓
【景気のいいニュースが飛び交う】
↓
【投資にお金を投資に回そうと思う人が多くなる】
↓
【企業に投資する人が多くなると、企業が安定・新規事業に着手できる】
↓
【さらに、株式市場への金額も増え、日経平均が上昇する】
ここで、一章で学んだ円安円高の基本的な考え方を思い出して下さい。
国の力を象徴する通貨は、同様に国の力を象徴する「日経平均株価」と同様、国の価値が高まると、その価値を高めていきます。つまり、円高(円の価値が高い)に推移していきます。
では、企業業績が良くなり、日経平均株価が上昇すると、円高になるのか。
というと、そうでもないのが、マーケットの面白いところです。
物語は、まだまだ続きます。
自分で「物語を作る力」 その②
~逆説的なストーリーを作ってみる~
このように、王道のストーリーをつむぎだしたあなたが次にすることは、そのストーリーを逆説的に疑ってみることです。
「日経平均と連動して、日本の価値を表す通貨「円」が上昇するかな?」
ここを考えてみます。
本来、その国の強さを表す通貨の価値が高くなっている「円高」ですが、いいことだけではありません。
むしろ、輸出に頼っている外需企業の業績には悪影響を与えます(ちなみに、日経平均株価を構成する225社の中で、半数以上を占めます)。
原理をもう少し詳しく説明していきます。
米国(ドル)との対比で考えれば、円高ということは、相対的にドルの価値が低いということですよね。
円高ドル安のとき、米国企業は、ドルの価値の下落を背景に、日本企業のモノやサービスの購入、取引を控えてしまいます。
そのため、日経平均株価を構成する225社の半数以上の企業の業績に悪影響を与えてしまうのです。
こういった事態が続いてしまうと、結果として、日経平均株価が下落してしまうこともあるのです。
つまり、先ほどの物語の続きとして、
【GDP成長率上昇の報道】
↓
【人々の心から不安が消える】
↓
【財布のヒモがゆるくなる】
↓
【いろんなモノやサービスが売れる】
↓
【企業の業績がよくなる】
↓
【景気のいいニュースが飛び交う】
↓
【投資にお金を投資に回そうと思う人が多くなる】
↓
【企業に投資する人が多くなると、企業が安定・新規事業に着手できる】
↓
【さらに、株式市場への投資額も増え、日経平均株価が高まる】
↓
【日本の価値(円)が高まり、相対的に米国の価値(ドル)が低くなる】
↓
【米国企業が日本企業との取引を控える】
↓
【日本の外需企業の業績が悪化する】
↓
【日経平均株価が低迷する】
こんな風に、逆説的な結末になることもあるのです。
自分で「物語を作る力」 その③
~登場人物の存在を考えてみる~
その②までで、基本的なストーリーをつむぎだせたはずです。
しかし、物語には、かならず、登場人物がいますよね。
ここでは、その登場人物のことを考えてみましょう。
FXマーケットにおける登場人物とは、「個人投資家」、「機関投資家」、「各国要人」などが挙げられます。
たとえば、ドル円が大きく円高にふれたとき、各国要人はどうすると思いますか?各国要人である財務大臣の義務は、自国の経済の安定と成長です。
あるとき、過度な円高ドル安水準に達したとします。
外需企業の業績がぼろぼろになっていく様を、財務大臣としてみすみす見過ごすわけにはいきません。
すると財務大臣は「どんなことをしてでも、ある一定の円安水準までもどし、日本企業に元気を取り戻させなければ」と思いますよね。
そんなとき、為替介入が発動されます。
無理やり、政府の資金(外国為替資金特別会計)を使ってドルを買い、円の価値を下げていくという行為です。
実際にはそうしないこともありますが、「介入するかもしれない」というだけでマーケットの安定を求めること(口先介入)や、海外の通貨当局を通して、ドルを買い入れる委託介入などを行うこともあります。
そんなときは、こんなストーリーになります。
【何かの理由で、過度な円高ドル安水準になる】
↓
【さらなる上昇を見込んで、円がさらに上昇する】
↓
【政府が口先介入のニュースが流れる】
↓
【円安移行を予測した市場参加者が円を売る】
また、登場人物としての「機関投資家」のことを考えてみましょう。
われわれ個人投資家は、自分の好きなときに投資することができますが、「機関投資家」という登場人物は、基本的に、預かった投資資金を、常に運用していないといけないのです。
たとえば、米国の株式市場が低迷していたとしますね。そうすると、「機関投資家」は持っている資金を家で寝かせるわけではなく、どこかに投入しなければなりません。
「Vehicle(投資ビークル)」という言葉を聞いたことがありますか?
ビークルとは英語で「乗り物」という意味ですが、上昇傾向が続いている銘柄や通貨に投資するとき、「その市場がビークルになる」という表現をされることがあります。
その場合は、このような物語も考えられます。
【何かの理由で、過度な円高ドル安水準になる】
↓
【機関投資家は「円」というビークルに資金投入しようとする】
↓
【一定水準まで上昇すると、次のビークルを探し当てた機関投資家が乗り換えはじめる】
↓
【円が下落し、個人投資家もビークルを乗り換えていく】
こんな風に、物語に登場する登場人物の職務上の義務や、利益追求の方法を知っておけば、どのようなときに、その人物たちがあらわれ、どういった動きをするのかが読めてくるのです。
その他、もろもろの状況があるのですが、それはまた、分析の章で詳しくお伝えしましょう。
最後に
~自分で考えることで、「情報の非対称性」から逃れる~
「レモン市場」という言葉を知っていますか?
経済用語で、「商品やサービスの品質が、買い手にとって未知であるために、不良品ばかりが出回ってしまう市場」のことを指します。
中古車市場が例として取り上げられることがありますが、これは、金融市場でも一緒だといわれています。
簡単にいえば、Aさんが知っていてBさんが知らない、という状況に置かれたとき、Aさんが何かの金融商品を売ろうと魅力的な情報をつくれば、Bさんは、Aさんが作った魅力的な情報を信じてしまい、金融商品を買ってしまうということです。
この問題の本質は、「情報の非対称性」にあります。
情報提供者は多くの場合、立場や個人的な感情などいろいろな事情から、情報にバイアスをかけます。そしてそれらの情報は、当たり前のようにわれわれの身の回りに存在しています。
これはわれわれFX投資家全員が、逃れることのできない現実です。
つまり、FXで確実に、かつ長期的に利益を上げるためには、この「情報の非対称性」の構造から逃れることが必要になってきます。
2章でお伝えしたコツをまとめると、まず、「調べる技術」でできる限り信頼性の高い情報をスピーディに集め、「震度を測る技術」でマーケットインパクトを自分で計り、かつ「物語化する技術」を使い、“自分の頭”で判断するということです。
これが、「情報の非対称性」の構造から抜け出す大きな第一歩なのです。
最初はそんなに大きな成果をあげられないかもしれません。
でも、自分で考える力をつけ、判断することを続けていれば、きっとあなたは、今よりもずっとマーケットのことを深く知る投資家に成長しているはずです。
それでは、第3章でまたお会いましょう。
