第2章 情報力 マーケット情報収集の【3つのコツ】を掴む 2
【震度を測る技術】で、投資力をさらに高める
その情報は、マーケットにどの程度の影響を与えるか?
前章では、FX情報の“調べる技術”について学びました。
投資の大きな判断材料となる「情報」を、限られた時間の中で、かつ自分の生活スタイルに合わせながら収集していくことはとても重要なことです。
しかし、より重要なことは、その収集した情報の「震度」を知ることです。投資の材料としての情報は、その「震度」で価値が異なるのです。本章では、この「震度」とは何かということと、その「震度を測る」コツについて、説明していきたいと思います。
さて、ではFX投資における「情報の“震度”」とはなにか?
間単に言うと、【その情報がFXマーケットに与える影響度】のことです。
このレポートを読んでいる方のほとんどが、経済学者でもジャーナリストでも評論家でもなく、【FX投資家】であると思います。つまり、われわれ投資家が情報収集をするときに、もっとも気にすべきことは、それが、ジャーナリスティックか、面白いか、評論に値することかなどではなく、その情報が、【マーケットを動かし得る情報】なのか、そうだとしたら、【どのぐらい価格を動かすか?】ということなのです。
それを読むことで、FXの勝率はぐんと上がるはずです。
震度を測る3つのコツ
では、情報がマーケットに与える「震度」を測るにはどうすればいいか。
それには3つのコツがあります。
①「市場参加者の気分と視点」を知る
②「経済統計の特性」を知る
③「要人のキャラクター」を知る
これからそれぞれに関して詳しく説明していきますが、一貫して大切なことは、そのニュースを見て「自分がどう思うか」を主体的に考えると同時に、「人(市場参加者)が、どう思うだろう?」という客観的な視点を持つことです。
では、(1)の【「市場参加者の気分と視点」を知る】から見ていきましょう。
震度を測るコツその①
【市場参加者の【気分】と【視点】を知る】とは?
人には、【気分】がありますよね。
どんな賢人でも、人生の達人でも、毎日気分が常に一定、という人は存在しないと思います。
多くの場合、安心していて、自分の好きなことをしている、自分の思った通りに事が進んでいる時などは、人は気分がいいはずです。
反面、何か心に不安があったり、自分の嫌いなことをしている、自分の思った通りにことが運ばないとき、人の気分は悪くなるはずです。
では、マーケットはどうでしょうか?
マーケットも、市場参加者である【人】の総体です。
つまり、マーケットにも、【気分】があるのです。
ものすごくシンプルにいえば、景気が上向いていたり、為替市場に影響を与えそうな不確定要因(リスク)が表立っていなかったりすると、マーケットの気分はよくなります。雰囲気がいいという状態といっていいでしょう。
こんなときは、実際はたいしたことのないニュースでも、そのニュースのいいところを見て、好材料視する傾向があります。
反面、景気が悪かったり、経済に影響を及ぼす不確定要素が多かったりするときは、人々の心に不安や不信感が台頭し、マーケットの雰囲気は悪くなります。
こんなときは、少しでも悪いニュースが流れると、その悪い側面ばかりを見てしまい、悪材料視してしまいがちです。
少し昔の話になりますが、私が記者だった時代、2009年の9月24日と2010年の1月29日、この両日に、米国から以下のようなニュースが流れました。
「政策金利の据え置き。経済は強まりつつある」
まったく同じニュースが、為替市場を駆け巡りました。
その結果、どうなったか。
当然、このニュースは基本的に、米国経済(株式・ドルなど)を上向かせる材料です。
しかし、2009年9月の際は、その他の要因により、景気の不透明感が台頭しており、市場の雰囲気は決してよくありませんでした。
そのため、そのニュースは悪い方向に受け止められて、米国株式は前日比で下落してしまったのです。
一方、2010年1月のときは、経済状況はそこまで変化がなかったにもかかわらず、「もうここまでくれば、米国の景気低迷は底を打っただろう」という楽観的な雰囲気が市場に広がっていたため、マーケットは、素直に”相場を上げる材料”としてこのニュースを受け入れたのです。結果として、株価は上昇しました。
こんな風に、マーケットは、同じニュースでも、その受け取り方を変化させます。
われわれFX投資家にとって重要なのは、この市場の気分がいいか、悪いか、ということを把握することです。
その気分を読み取って、【今、このニュースはマーケットにどのような震度を与えるか】と考えることで、投資の勝率が高まってくるはずです。
個別の人間のように、複雑な気分を読み取る必要はありません。
あくまで、マーケット(市場参加者)は今、ニュースを受け入れる気分として「楽観的か」「悲観的か」というざっくりした読みを持つ、という程度で問題ないので、そんなに気負わなくても大丈夫です。
気分を計るための代表的名指数
【VIX指数】
しかし、気分というのも、とても主観的でぼんやりしたものです。
なかなか、自分の主観だけで判断するというもの難しいでしょう。
そんなときのために、マーケットの雰囲気を読むひとつの技術として、VIX指数のことをお教えしたいと思います。
VIX指数とは、米国シカゴオプション取引所(CBOE)が作った「ボラティリティ・インデックス」の略称です。
米国のS&P500を対象とするオプション取引の30日間のボラティリティ(変動率)をもとに計算されていて、別名「恐怖指数」と呼ばれています。
この指標はつまり、投資家がどの程度、【マーケットに対して恐怖心を抱いているか(精神的にシュリンク)しているか】ということを指し示す代表的な指標なのです。
通常この指標は、10~20の範囲で動いており、相場の先行きに不安を感じたときに、数値が高まる傾向があります。
たとえば、2008年のリーマンショックのときは、最高値の89.53を記録しました。03年にアメリカがイラクに侵攻したときでも34.69だったことからも、当時の投資家の恐怖(雰囲気の悪さ)がとてつもないものだったことがわかります。
こういうときは、好意的な情報も、裏読みされて、マイナスに捉えられる傾向もあります。つまり、ポジティブな震度が気分によって相殺されてしまうのです。
VIX指数は、CBOEのサイトで見てもいいですし、日本のマネーポータル関連のサイトからもみられますので、「今日のマーケットの雰囲気がいいのか、わるいのか」判断がつきづらい、というときは、ぜひとも参考にしてみてください。
気分のほかに、「視点」もある
またマーケットには、気分のほかに、「市場の視点」というものがあることもお伝えします。
市場の視点とは、その名の通り、【マーケットの目線が今、どこに向いているか】ということです。
つまり、マーケットが、どういった情報を材料視しているのか、ということです。
カンタンにいえば、その時の情報の「トレンド」や「流行」ということです。
たとえば、ウクライナ問題、中東への爆撃問題の関連情報などが新聞やニュースサイト、マネーポータルのトップに連日掲載されているときに、別の"実際にはマーケットに大きな影響を及ぼしそうな"情報が流れてきても、市場の視点からズレているため、材料視されないケースがよくあるのです。
なので、マーケットに影響を与えそうだ、というニュースが出てきたときでも、これは今の【市場の視点】の先にあるかな? と一瞬考えることで、投資判断の精度が高まってきます。
「市場の視点」というのは、同時平行的にいくつもあるものではありません。
基本的に、市場を動かす大きなこととしてピックアップされているイシュー(問題)は、数えるほどしかありませんので、それぞれを意識しながら、判断材料にしていきましょう。
震度を測るコツその②
【経済指標のインパクト】を計る
また、FX投資で特に重要な判断材料になってくるのが、経済指標です。
事実、各国の強さを表す数値として、経済統計はとても重要な意味を持ちます。
たとえば、国内総生産(GDP)、雇用統計、消費者物価指数(CPI)、鉱工業生産指数(IPI)、機械受注統計などなど。これらの報道が出たとき、多くのFX投資家は、その結果を受けて、すぐにポジションを取る傾向があります。
でも、そこで少しだけ立ち止まってみてください。
これらの統計の数値には、それぞれの特性があるのです。
大きなポイントは「速報性」と「マクロ性」です。
速報性に関してですが、経済統計には、GDPのように、速報値がでてから確報値がでるようなものから、公式に一度しか発表されないものまでありますし、その結果が過去数ヶ月にさかのぼるものから、直近一ヶ月のものまでさまざまです。
速報性の高いものは、統計値が出たあとに、すぐにマーケットに影響を与える傾向があります。
反面、速報性の低いものは、統計値が出た後、じわじわゆっくりとマーケットに影響を与える傾向があります。
また、マクロ値とは、その国の指標として、海をまたいで世界的に影響を与えるかということです。
ひとつの参考として、以下の表を作成しましたが、あくまで参考程度にとどめておいてください。前述の、市場の雰囲気、視点、またその他の要因によって、経済統計の影響度は大きく変っていきますので。
経済統計が市場に与える震度!
| 統計名 | 震度 | 速報値 | マクロ値 | ミクロ値 |
|---|---|---|---|---|
| 国内総生産(GDP) | 14 | ★★ | ★★★★★ | ★★★ |
| 消費者物価指数 | 11 | ★★★★ | ★★★★ | ★★ |
| 失業率、有効求人倍率 | 11 | ★★★★ | ★★★★ | ★★ |
| 鉱工業生産指数 | 12 | ★★★★ | ★★★ | ★★★★ |
| 機械受注統計 | 10 | ★★★ | ★★★★ | ★★ |
| マネーストック (旧マネーサプライ) |
9 | ★★★★ | ★★★ | ★ |
| 雇用統計 | 10 | ★★★★ | ★★★★ | ★ |
| 貿易収支 | 7 | ★★★ | ★★★★ | ★★★★ |
震度を測るコツその③
「要人のキャラクター」を知る
マーケットの情報には、市場の空気・視点と数的情報のほかに、さらにもうひとつ大切なものがあります。
それが、「重要人物の発言」です。
「要人発言」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
FXマーケットにおける要人とはさまざまですが、たとえば各国の大統領、首相、各種大臣、国際的議会の議長、また著名投資家などがそれに当たるでしょう。
もちろん、重要人物とされている人の発言は多くの場合、マーケットに影響を与えるのですが、一概に「偉ければ偉いほど、市場に与える影響が大きい」というわけでもないのが、またマーケットの面白いところです。
マーケット情報としては、その要人の性格や、考え方などが、情報の震度に変化を生じさせるのです。
日常生活で考えればわかりやすいでしょう。普段、私たちは、身の回りの人たちをキャラクターや性格で分類しているはずです。この人は、楽観的だ、極端だ、慎重だ、過激だ、などなど。
要人にも、同じようなキャラクター設定があるのです。
一例として、FOMC(連邦公開市場委員会)の運営機関として有名なFRBの議長に、2014年2月から初の女性議長として就任したジャネット・イエレン氏のことを挙げましょう。
彼女は、ハト派(慎重派)として有名であり、米国の利上げに関して慎重な姿勢を持っています。
これが、マーケットにおけるイエレン議長という要人のキャラクターなのです。
実際に、イエレン氏がどんな人なのか、ということはこの際関係ありません。
大切なのは、マーケットにおいてその要人がどんなキャラクターか、という風に認識されているかということなのです。
この場合、ハト派なイエレン氏が、ハト派の発言をしたとしたら、どうでしょう。マーケットからしたら「まぁ、そりゃそうだ」という感じで受け入れられ、その情報の震度は低くなりますよね。
反対に同氏が、タカ派(強硬派)に近い発言をしたとすると、「あのイエレンさんが!」という風に受け止められ、その情報の震度は高くなるのです。必然的に、マーケットにもたらす影響も大きくなります。
この一例のほかに、たとえばビッグマウスで有名な人や短気で有名な人などなど、要人にはそれぞれのキャラクター分類があります。
ただの発言として情報を処理するのではなく、「このキャラクターで通っている人が、こんなことを言った」
という視点で要人発言を読み解いていきましょう。
そうすることで、さらにニュースにおける震度の読みが深まり、FX投資の利益獲得に大きく貢献するでしょう。
最後に
マーケットでも、「常識力」がものをいう
かの有名なウォーレンバフェットはこういいました。
「投資家としての成功に、微積分や代数が必要なら、わたしは新聞配達の仕事に戻るしかないだろう」
この格言はいろいろな解釈をされますが、私はこの格言を
【投資判断は、きわめて大衆的で、常識的である】
といった風に自分なりに解釈しています。
なにも、難しい数学的分析をすることだけが勝率、利益率を上げる手段ではありません。
むしろ大事なのは、いつも皆さんが日常的に使っている【常識力―「普通に考えれば、こうだよな」と推測する力-】だと思うのです。
特にFXマーケットは、たとえば株式市場に比べて市場規模が圧倒的に大きいです。
具体的には、FX市場の年間取引高は、2013年の時点で2500兆円を記録し、2014年には4000兆円を見込んでいます。(矢野経済研究所調べ)
一方、株式市場は405兆円超(東京証券取引所・2014年5月時点・野村総研調べ)なので、その規模の大きさが計り知れるというものです。
この現実は何を指していると思いますか?
つまりこれば、多少の情報のブレやインサイダーのような情報で市場は左右されない、ということを意味しているのです。
圧倒的に多くの人間が参加するこの市場では、情報がどのように人(市場参加者)に伝わり、そこでどういった判断が下されるのが“普通か”という、常識がものをいいます。
さらにいうと、ひとつの情報から、投資判断につなげる「物語(ストーリー)力」があなたの投資力をさらに高めていくのです。
次回はこの物語化する技術を深掘りしていきますので、ご興味のある方は読んでみてください。


