新・楽天銀行FX 口座開設者限定レポート 身につけよう! ~FXで失敗しないための7つの力~

第4章 ファンダメンタルズ分析力 FX投資におけるファンダメンタルズ分析の基礎 2

経済指標の“意味”を知り、理解を深める

「フロー指標」と「ストック指標」、どっちが大事?

マーケットでは、市場参加者に信頼されている情報が、影響度の高い情報です。

経済指標の多くは、政府主導で調査・作成されているため、公平かつ正確な調査として、市場における信用度・注目度が高く、為替市場を動かす大きな要因となっています。

主要経済指標の内容に関する理解を少しだけ深めることで、ファンダメンタルズ分析的な連想力がついてきます。

今回はその部分を学んでいきましょう。

さて、経済指標は大きく二種類に分けられます。

「フロー指標」と「ストック指標」です。

二つの言葉の説明をしていきましょう。

フロー指標というのは、「流れる」という言葉通り、ある一定の期間にやり取りされるサービスの流れから算出された数値のことです。

ストック指標とは、一定の期間に蓄積された数値のことです。

たとえるなら、お風呂に湯を入れる時、一分間に湯船に入るお湯の量が「フロー」で、湯船に溜まっていく量が「ストック」となります。

フロー指標とストック指標、どっちが大切なのかという議論には答えがありません。

下図のように、湯船に入っている水の量をその国の経済の大きさとすれば、たくさんお湯が注がれたとしても、水面はそんなに急には上昇しません。

経済活動が活発になっても、経済自体が大きいと、そこまで目立たないわけです。

逆に、小さな湯船(経済規模)であれば、少しでもお湯が注がれると、水面は急上昇(GDP成長率が高くなる)ということになります。

つまり、米国やユーロ圏のように経済規模が大きくなった地域では、成長率が低いのは当たり前と考えられますし、反対に、アフリカのGDP成長率が高くても誰もそこまで注目しません。なぜなら、湯船(経済規模)が小さいからです。こういったことに注目し、経済指標を読んでいきましょう。

「フロー指標」と「ストック指標」の違い フロー指標:フロートはある時間内に生産された量のこと ストック指標:ストックとはある時間内に貯蔵された量のこと

主要国は、経済規模が大きいので、GDP成長率が低くても当然と考える。フロー指標とストック指標の双方を眺め、バランスを保ちながら投資の判断基準にすることがコツ。

経済指標の判断の注意点

経済指標は、パーセンテージ、指数、数値など、様々な形式で発表されます。

ただ、どういった形で発表されるにしろ、「事前予想」を見ておく必要があります。

ある経済指標が出たときに、比較対象としての「事前予想はどうだったのか?」と考えることが重要なのです。

たとえ良い数値が出たとしても、事前予想と同程度であれば「好材料が出尽くした」という印象から、逆に通貨の下落要因にもなります。

同時に、どんなに悪い材料が出たとしても、事前予測と同程度であれば「悪材料が出尽くした→下げ止まったのだから、今度は通貨の価値が上昇する」という考えから、通貨が買われることもよくあります。

そして、「前月比」「前年同期比」という比較対象をも知っておきましょう。

ちなみに、経済指標ではたいていは前月比が使われますが、「季節性」などがある経済指標では前年同期比が用いられたりします。季節性とは、時期による通貨の変動要因のことです。季節性を計算に入れた「季節調整済み値」というものが出される経済指標もあります。これを使うと、前月の数字との比較が有効になる場合もあります。

重要な経済指標①
~GDP(国内総生産)~

GDP(Gross Domestic Product)は、「国内で生産されたモノやサービスの価値」のことです。

その国の「景気動向」を直接的にイメージさせることから、経済指標の代表格のように認識されています。

基本的なシナリオとしては、「GDP成長率が低い→景気が悪い→通貨下落」、「GDP成長率が高い→景気が良い→通貨上昇」というシンプルなものです。

また、GDPの推移からは副次的に金利動向の予想も立てられます。GDPが悪く、その国の今後の経済の悪化が予想される場合は、政策金利の引き下げが予想され、そしてその国の通貨の下落が予想されたりします。

ちなみに、多くの国において、GDPは4半期ごとに発表されます。日本のGDPの調査対象となるのは直前の四半期。また、GDPは三種類に分かれているケースが多いです。それは「速報値」「改定値」「確報値」です。

読んで字の如く、速報値が一番早く、そのあとの調査の結果に改定がなされたのが「改定値」、最終的な数字が「確報値」です。

投資家としては、「速報値」と「確報値」の両方をチェックしておきましょう。通常、速報値と確報値はそこまでの誤差はありませんが、過度に確報値が上方・下方修正された際には相場にインパクトを与えると考えるべきです。

実際、GDP成長率と為替相場を中長期的な視点で眺めると、関連性があるとも言いきれません。

中長期的と言うよりも、速報値が出たときの短期的なインパクトを重要視してみましょう。

具体的には、もし日本のGDPが良ければ、円買いドル売りが短期的に先行すると予想して、まずその流れに乗る。そして、短期的なテクニカル分析を用いて、下落が始まると思われるポイントで売る。また、そこで新たに売り建てる、などという手法をとるとさらに利益獲得チャンスが広がったりします。

ポイント

速報値に注目

年4回発表、調査期間ともタイムラグがあるため、そこまで速報性は高くない

速報値と確報値に過度に差が出た時は注意!

長期的に相場に影響を与えることはない→短期的な材料に

重要な経済指標②
~景況感指数~

「景況感指数」とは、景気の先行きに対して、人々がどう思っているかを指数化したものです。

米国の指標として注目される景況感系指数は2つ、①「コンファレンス・ボード消費者信頼感指数」②「ミシガン大学消費者景況感指数」です。

①は政府調査の公的な指標ですが、②も市場に影響の強い指標です。

ちなみに、日本では「日銀短観」(全国企業短期経済観測調査の通称)がこれに該当します。

日銀短観は、「良い」「さほど良くない」「悪い」の選択肢の中から回答を選ぶ形式になっていて、三月、六月、九月、十二月の年4回発表されます。

GDPなどに比べ、集計から発表までのタイムスパンが1か月と短く、速報性に長けているため、短期的な相場材料になります。

また、景気以外にも、製品需要・在庫・設備投資計画などこまかな資料が提出されるため、日本の景気を測るうえでもっとも重要視される指標です。ちなみに、海外でも「TANKAN」という名称でマーケット参加者に注目されています。

ポイント

最も市場が注目するのは業況判断DI。速報性に長けている→短期的な起爆剤になる。

50%以上→景気上昇

50%ちょうど→景気変わらず

50%以下→景気悪化

重要な経済指標③
~雇用統計~

雇用統計は各国の雇用状況を数値化した経済統計です。特に為替市場の注目を集める雇用統計が、米国の「米雇用統計」。米国は、世界のGDPの約30%を占めています。そして米国のGDPの約70%が個人消費です。

つまり、米国の雇用の悪化は「米国の個人消費の悪化→景気減速→世界経済の減速→投資家のリスク許容度の悪化」というサイクルを作り出すのです。経済の先行きを示す先行指標として、影響力のある相場材料とされています。

同統計は「失業率」や「製造業就業者数」など10数項目に分かれていますが、その中でも短期的に意識されるのが「非農業部門雇用者数」です。非農業者部門とは、その言葉通り、農業以外の部門に属する事業者の給与支払い帳簿を元に雇用者数を統計したもの。

前月比が基本です。

雇用統計を材料に取引をする場合は、事前予想と見比べながら、短期的な上昇・下落を予想し、数十分から数日のスパンで取引を終了させるのが妥当でしょう。

「『失業率』の方が分かりやすい」と思われる方もいるでしょうが、「失業率」は景気の動きと若干タイムラグがあります。景気が悪くなってすぐに解雇される人は少ないので、「景気悪化→解雇(失業)」という流れには時間がかかります。

ですので、短期的な相場材料にはなりません。どちらかというと、失業率はその国の金融政策に大きな影響を与えます。失業率が急増したりすると、金利を含む経済政策の変更があるのでは、と考えをめぐらすのが得策です。

ポイント

短期的には、「非農業部門雇用者数」に注目。

長期的には、「失業率」に注目。

重要な経済指標④
~消費者物価指数~

消費者物価指数というのは、モノやサービスの価格が上昇したか、また下降したかを示すもので、指数で示されます。これによって、その国の現在のインフレ率を測ることができます。

以前記した通り、インフレ率が高まるということは、通貨の購買力が総体的に下がるということなので、政府は利上げして市場に出回るお金の量を減らし、通貨価値を維持しようとします。お金の量が以前よりも少なくなったら、必然的に通貨価値は高まるわけです。

また、金利の上昇はその国を好景気に見せかけることから、その国の通貨を上昇させる傾向があります。

反対に、インフレ率が低下すると政府は利下げをして通貨価値を上昇させ、また景気を上昇させようとします。金利の低下は、「景気を上昇させようとする努力」とみなされるので、「今は経済が悪化している」と認識され、その国の通貨は売られることになります。

なお、米国の消費者物価指数には、「総合全体指数」と、食品とエネルギーの割合を抜いた「コア指数」があります。この「コア指数」のほうが相場に影響を与えます。

たとえば、米国においてインフレ懸念それ自体が経済の圧迫材料になっていると考えられている時は、コア指数が上昇し、インフレ懸念が台頭すると、それだけでドルが売られたり、反対に、コア指数が下落して、インフレ懸念が後退すると、ドルが買われたりもします。市場の視点、市場の問題点がどこにあるのかを確認しながら見ていかないと、結構騙されやすい指標です。

ポイント

その国の金利とインフレ率を相対的に見ることがポイント。

日本の場合、消費者物価指数は2000年の平均値を100とし、各月のインフレ率を計算している

重要な経済指標⑤
~製造業指数~

実体経済の勢いを知る経済指標に、製造業指数というものがあります。

注目は米国の「ISM製造業景況感指数」。これは「全米供給管理協会」(ISM)というところが同国の製造業の購買・供給管理の専門家400人以上にアンケートを行い、様々な調査項目に対して、一か月前よりも「良くなっている」「同程度」「悪くなっている」の3つの選択肢の中から選ばせ、集計した結果を発表したものですが、これは実際の景気に先行した結果が出ると言われています。

このような先行指標は、トレンドの転換を示唆するケースが多いため、相場に強く影響を与えます。特に、ISM製造業景況感指数に関して言えば、時期的にも、主要経済指標の中で一番早く発表されるため、さらに注目度は高まります。

また、この景況感指数は米連邦準備理事会(FRB)の金利政策にも大きな影響を及ぼしています。実際、過去にISM製造業景況感指数が50%を下回った時には、米国は一度も利上げをしていませんし、50%を大きく上回った際には、利上げで金融引き締めを行うケースが多く見られるため、先行きを占う有効な指標です。

ポイント

ISM製造業指数は、50を上回ると景気拡大、50を下回ると景気後退を示唆している。実体経済に即しているという意味で、非常に注目度が高い。トレンド転換のきっかけにもなる。

重要な経済指標⑥
~住宅系指標~

住宅系指標も経済の良し悪しを強く反映するファクターです。

住宅はそれ自体の購入資金が高いという理由のほか、住宅投資が活発化すると、それに付随して家具や電気製品など、総合的な消費が喚起されるからです。

種類としては各国の、住宅着工件数、建設許可件数、新築住宅販売件数、中古住宅販売件数などに注目ですが、たいてい製造業系指数などと同様に、先行指標の意味合いを含んでおり、投資家はそこからトレンド転換を見極めようとします。

また、金利と住宅には強い関係があります。住宅をキャッシュで買う人はなかなかいません。ローンを組みます。

銀行からお金を借りるわけですから、家を買う人はみな銀行の金利を気にします。

金利が低いときに家を買った方が得なので、一般的には「金利が低い→住宅系指標が伸びる→景気が拡大する」というシナリオとなります。反対に「金利が高い→住宅系指標の低下→景気悪化」というシナリオもあります。

ポイント

住宅市場が改善すると、その他の関連市場も盛り上がるため、景気を測る指標として認識されている。他に材料がないときはトレンド転換を引き起こす影響力を持っている。

好奇心を持つことで、さらに深く知っていく

ニュースでは、経済指標の発表とともに、前日比、前月比での結果、そして、それが市場に与える影響まで書いてある場合があります。

それを読めば、確かに一時的な方向性は読めます。

ただ、自分で経済指標に対して興味を持ち、その構造を知ることで、さらに市場への理解は深まり、相場への震度を予測することができます。

FXに関連する経済指標は今回紹介したもの以外にもたくさんあります。

すべてを一気に理解することは難しいですが、都度興味を持って読み解いていき、投資家として更なる高みを目指しましょう。